左の道

2/6
前へ
/44ページ
次へ
もしかして…これは…俺が見ているのは夢なのか? 彼女が近付いて来るごとに、俺は目の前の光景を疑った。 こんなに都合の良い話があるだろうか? タイムトリップで、人生の一部をやり直した。 やり直したのは記憶の中の過去なのに、現実さえもが変わって来ている。 それも良い方にだ。 だけど、こんなの、いくらなんでもやりすぎだろう。 そうだ…俺はきっと今、夢を見てるんだ。 そうでなきゃ、こんな奇跡みたいなことがあるはずがない。 「翔さん!」 俺の胸に飛び込んだ幸の衝撃を受け留める。 横断歩道であいつを抱き締めた時、世界の時が止まった気がした。 「幸…」 夢でも良い。 たとえ、俺が今、なんらかの原因で死にかけていて、幻覚を見ているのだとしても… それでも良いから、このまま時が止まって欲しいと思った。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加