7人が本棚に入れています
本棚に追加
「お母さん、どうしたの?
あ、とにかく向こうへ!」
信号の青が点滅していた。
若い女性の声で、止まってた時がまた動き出したような気がした。
俺は、しっかりと幸の手を握り、歩道に向かう。
幸は、涙で顔をぐしゃぐしゃにしていた。
「……なんて顔してんだよ。」
「あなたのせいでしょ。」
あぁ、この声だ。
昔よりちょっと低くはなっているけど。
「幸…おまえ、本物の幸なのか?」
「それは私の聞きたいことよ。
翔さん…あなた、本物の翔さんなの?」
「翔さんって…お母さん、まさか、この人…」
若い女はじっと俺をみつめた。
「翔さん…紹介するわ。翼よ。」
初対面なのに、その女は不思議とどこか懐かしいような気がした。
そうだ…さっきからこの子は幸のことをお母さんと呼んでいる。
「皆に良く言われるのよ。
目元があなたにそっくりだって…」
「えっ…!?」
年の頃は、俺が幸と別れた時の年くらいか…
つまり、それは…
「俺の…俺の子なのか!?」
「ね、翼…本当に鈍い人でしょう?
ケイジだったら、あなたの顔を一目見ただけで気付くでしょうに。」
そう言って、幸は笑った。
涙に濡れた顔で…
最初のコメントを投稿しよう!