左の道

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それから、数ヶ月後…俺と幸は結婚した。 式はいいって言ったのに、けじめだとか、幸のことを考えろとか言われて、挙げないわけにはいかなくなった。 今の俺には、偽の過去で買ったものよりさらに小さなものしか買えなかったが、それでもやはりダイヤの指輪を買った。 小さな教会で…参列者も少ないが、皆、心から喜び、俺達を祝福してくれた。 不思議なことだが俺は今…タイムトリップで体験したあの幸せな偽の記憶の続きを体験しているような気がする。 これから先、どうなるのかはわからない。 だが、出来るだけ後悔しない生き方をしようと思っている。 やり直すのもここらが限界だ。 それに俺は、何十年もずっと後悔し続けて来たんだ。 こんな想いはもう二度とごめんだ。 「幸…本当に長い間待たせてすまなかった。」 「いいのよ。私…昔からあなたを待つことには慣れてるから。」 「今日はプレゼントや手紙はないのか?」 「あなたがまた歌ってくれたら、持っていくわ。」 この分では、ヴォルケイノ復活ライブは近いうちに実現しそうだ。 華やかなウェディングドレスは、若さを失った幸には似合ってるとは言いがたかったが、それでも俺には愛しく見えた。 タイムトリップに行って良かった。 だが、これから先は、もう二度と行くことはないだろう。 俺には過去に戻る理由はもうないのだから。 俺にあるのは、未来だけだ。 それほどは長くないだろうが、その分、悔いのない幸せな人生を作っていきたいと思う。 俺だけじゃ出来なくても、今は幸と翼がいてくれるから、きっと出来ると思う。 幸の放り投げたブーケは、青い空をかすめて舞い、すっぽりと翼の腕におさまった。 ~fin.
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