第一科目 国語

5/6
前へ
/32ページ
次へ
彼らに対する授業を終えると、残っている事務作業に取り掛かった。梅野君が声をかけてきた。 「あの、手伝いましょうか?」 「いいよいいよ、最近教育実習で忙しいんでしょ?」 「それはおっしゃる通りですが」 「早く帰って休んだ方がいいよ。むしろ僕の方こそ、君の手伝いをしないといけないからさ」 彼の目元には隈が出来ている。少し無理をしているのではないかと心配になった。 「僕の仕事はもう終わったので」 「そうなんだ。じゃあ、気をつけてね」 「なら、お言葉に甘えて」 そう言うと彼は帰ろうとした。しかしすぐに足を止め、僕に質問した。 「そうだ、一つ聞いてもよろしいですか?」 「なんだい?」 「あの二人の様子、どうでした?」 「あの二人って…菊池君と金子君?相変わらず仲良くしているよ。それがどうかしたの?」 「そうですか…それならよいのですが」 彼は僕から目を逸らした。 「ん?」 「いえ、なんでもありません。それでは失礼いたします」 彼はその場を後にした。 もしかすると、あの二人に何か起きているのだろうか? 悩みの種がまた一つ増えてしまった。僕は彼らのことを頭の片隅に置きながらも、残っていた仕事を片付け、帰宅した。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加