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彼らに対する授業を終えると、残っている事務作業に取り掛かった。梅野君が声をかけてきた。
「あの、手伝いましょうか?」
「いいよいいよ、最近教育実習で忙しいんでしょ?」
「それはおっしゃる通りですが」
「早く帰って休んだ方がいいよ。むしろ僕の方こそ、君の手伝いをしないといけないからさ」
彼の目元には隈が出来ている。少し無理をしているのではないかと心配になった。
「僕の仕事はもう終わったので」
「そうなんだ。じゃあ、気をつけてね」
「なら、お言葉に甘えて」
そう言うと彼は帰ろうとした。しかしすぐに足を止め、僕に質問した。
「そうだ、一つ聞いてもよろしいですか?」
「なんだい?」
「あの二人の様子、どうでした?」
「あの二人って…菊池君と金子君?相変わらず仲良くしているよ。それがどうかしたの?」
「そうですか…それならよいのですが」
彼は僕から目を逸らした。
「ん?」
「いえ、なんでもありません。それでは失礼いたします」
彼はその場を後にした。
もしかすると、あの二人に何か起きているのだろうか?
悩みの種がまた一つ増えてしまった。僕は彼らのことを頭の片隅に置きながらも、残っていた仕事を片付け、帰宅した。
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