わかっているよ

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わかっているよ

なんでわかってくれないんだ。 僕は今からおもちゃを片付けようと思っていた。それなのにお母さんは「いつまで遊んでるの。早く片付けなさいって」だって。 僕はもちろん「今からやるところだよ」って返したよ。 でもお母さんは「嘘おっしゃい」なんて言って笑ってた。 いつもそうだよ。 お母さんは僕のすることなんでもわかってるフリをするんだ。 この前の晩御飯も最後に苦手なしいたけを食べようと思ってたのに「嫌いだからって残しちゃダメよ」だって。 頭にきちゃう。 だから僕は旅に出ることにしたんだ。 お母さんも絶対わからないところ。 この前僕見つけたんだ。 お庭の物置の中に道が続いていること。 明かりがないと見えづらいけど、ずっとずっと見えない所まで続いている一本の道を。 僕はこっそり懐中電灯を持ってきてこの道を進むことにした。 きっとお母さんは僕が見つからなくて大慌てするよ。 僕はお母さんの慌てる顔を想像しながら進んだ。 「それにしてもどこまで続くんだろう」 かなり歩いたはずなのに本当に先が見えない。 僕は段々怖くなってきた。 「やっぱり戻ろうかな」 後ろを振り返っても一本の道しか見えなかった。 僕は急に不安になって歩いて来た道を戻ることにした。 けれどいくら歩いても元の場所は見えてこなかった。 「もしかして一生ここから出られないのかな」 泣きたくないのに涙が流れてしまう。 ついに僕は足を止めてうずくまってしまった。 「やっぱりここにいたの」 優しい声に僕は顔をあげる。 目の前にはお母さんが立っていた。 僕はお母さんに抱きついてえんえんと泣いた。 「お母さん貴方のことならなんでもわかるんだから」 そして僕はお母さんと手を繋いで歩いた。 歩きながら僕はなんで旅に出たかお母さんに話した。 お母さんはうんうんと頷いて何にも言わず聞いてくれた。 少し歩くと見覚えのある物置の光景が見えてきた。 やっと帰って来られたんだ。 僕は物置から出るとお母さんに「ごめんなさい」と謝った。 お母さんは笑って「いいのよ」とだけ言った。 本当にお母さんは僕の事わかってるんだな。 僕はそう思ったけど口には出さなかった。
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