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「こんにちは香苗(かなえ)さん。今日もお散歩かな?」 「こんにちは駅長さん。確か……(すぐる)さんだったわね」 「おや?名前を......憶えてくれたんですか?」 (すぐる)が驚いた表情でいうと、香苗(かなえ)は笑って頷く。 「ねえ、今日もいいお天気ね。空が高くて、野原の芝生が青々として。とっても気持ちがいいわ」 お気に入りのワンピースを翻し、香苗(かなえ)はその場でスキップして見せる。制服をきりりと着こなした(すぐる)も頷いて、誇らしげに線路の先を見据える。 「そうでしょうとも。この辺りは広々としていて清々しい。私もまた香苗(かなえ)さんと一緒に散歩したいな。また昔話を聞かせてほしいよ」 「もちろん歓迎よ(すぐる)さん。そうだ、今から一緒に行きますか?」 「ああいや、今日はまだ仕事が残っていてね。残念だな、また明日にでも」 すると香苗(かなえ)は可笑しそうにうふふと笑ってから首を横にふる。 「変な駅長さん。お仕事だなんて、私ここを電車が通るのなんて見たことないわ」 すると(すぐる)も帽子をとってそれで顔を仰ぎながら笑う。 「そうだったかな?ああ、たまたま香苗(かなえ)さんがいないときに通ってるんだよ」 そうなのかしらと呟きながらも香苗(かなえ)は納得する。 「じゃあまたね。行ってきます」 「1人で大丈夫かな?すぐ疲れてしまうかも」 すでに歩き出していた香苗(かなえ)(すぐる)を振り返るとにこやかに手を振る。 「大丈夫。それにね。道を歩いてへとへとに疲れるのって、楽しいものよ?」
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