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大好きな人とお付き合いしたてのころね、よく一緒にお散歩したのよ。
え?その人のお名前?どんなお顔してたか?
さあ......なんでかしら?よく覚えてないのよねぇ。
でもね、確か彼もあなたと同じ。駅長さんだったの。
制服姿が格好いいなって、いつも思ってたっけ。
ああ、それより。
2人ともにぎやかな繁華街とかテーマパークが苦手でね。だから静かな公園や彼の故郷をよく散歩したわ。
彼の職場でもある古い駅舎があってね、そこから年季の入った線路が続くの。
線路に沿って細い道があって、先には広い野原が広がっていて。
そこをね、自分たちの足でひたすらに歩くの。
最後はもうへとへとのフラフラよ。
それでもね、なんでか不快感はなかったの。
なんでかしらって不思議だったけど。
今になって思うのよね。
いっぽいっぽ踏みしめて。
自分の足で歩いてへとへとになるのって。
なんて幸せなことなのかしらって。
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