おうちが一番

9/18
207人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
 二度目の待ち合わせデートは、存外早く実施された。  翼の本当の誕生日は四月半ばの金曜だったので、外で待ち合わせ、私の奢りで夕飯を食べることにしたのだ。提案した時、今年はもう祝ってもらったのにと言いつつ、翼はものすごく嬉しそうな顔をした。非常に単純な男である。 「美羽!」  私の姿を見て、翼が嬉しそうな笑顔で手を振る。翼のスーツ姿はもう何度も見ているのに、仕事が終わって少し着崩れた姿は、家で眺めるものとは全然違う。なんだか少し大人の色気を感じた。 「美羽、朝も同じ格好見たけど、外だと、なんかいいな」 「なんだそれ」 「大人のおねえさんって感じで」  似たようなことを考えていて、思わず笑ってしまった。  夕飯はフレンチにした。家では作れないような少し高級感のあるものがいいかと思ったし、インド料理とかベトナム料理とか、そういうおしゃれな人が好みそうなものより、わかりやすいものがよいだろうとも。 「フランス料理のディナーって、小さい頃憧れた!」  あたり。本当に単純な男である。  オードブルから順に、料理が運ばれてくるたびに翼は嬉しそうにお礼を言い、しげしげと見つめ、おいしそうに食べた。少しずつ丁寧に。表情豊かだ。作った人もこれだけ喜ばれたら本望だろう。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!