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二度目の待ち合わせデートは、存外早く実施された。
翼の本当の誕生日は四月半ばの金曜だったので、外で待ち合わせ、私の奢りで夕飯を食べることにしたのだ。提案した時、今年はもう祝ってもらったのにと言いつつ、翼はものすごく嬉しそうな顔をした。非常に単純な男である。
「美羽!」
私の姿を見て、翼が嬉しそうな笑顔で手を振る。翼のスーツ姿はもう何度も見ているのに、仕事が終わって少し着崩れた姿は、家で眺めるものとは全然違う。なんだか少し大人の色気を感じた。
「美羽、朝も同じ格好見たけど、外だと、なんかいいな」
「なんだそれ」
「大人のおねえさんって感じで」
似たようなことを考えていて、思わず笑ってしまった。
夕飯はフレンチにした。家では作れないような少し高級感のあるものがいいかと思ったし、インド料理とかベトナム料理とか、そういうおしゃれな人が好みそうなものより、わかりやすいものがよいだろうとも。
「フランス料理のディナーって、小さい頃憧れた!」
あたり。本当に単純な男である。
オードブルから順に、料理が運ばれてくるたびに翼は嬉しそうにお礼を言い、しげしげと見つめ、おいしそうに食べた。少しずつ丁寧に。表情豊かだ。作った人もこれだけ喜ばれたら本望だろう。
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