春の酔い

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 それでおしまいだと思っていたのに。  一週間後、時任は私の部屋にやってきた。手土産にビールとつまみを持って。 「なんで住所」 「合コンの幹事に訊ねたら教えてくれた」  簡単に個人情報を教えないでほしい。  大体そんなものだ。本人がいくら気をつけていても、近くにいる人間の意識が低いと、だいなしになる。  ただ。時任の持参したビールが私の好きな銘柄だった。コンビニ限定の、いいことがあった時の祝杯か、嫌なことがあった時やり過ごすために、ちょっと奮発して買うもの。  部屋に入れたのは、それだけが理由。 「豚の角煮」 「そう! めちゃくちゃ旨くできたから、誰かに自慢してやりたくて!」 「時任が作ったの?」 「俺が作った」  時任としては、ビールよりもつまみがメインだったらしい。  バラ肉と煮卵の上に白髪ねぎ。細やか。白米と合いそうなので、冷凍したごはんをレンジで温める。 「彼女か友達に食べてもらえばいいのに」 「彼女も友達もいないし」  まあ、彼女がいたら、とっかえひっかえ食い散らかさないか。
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