春の酔い

7/18
前へ
/76ページ
次へ
「友達いないの? 合コンに一緒に来てたのは?」 「いない。昔の友達はみんな離れていったし、合コンで一緒のやつらはただの知り合い」 「シビア」 「向こうがそう思ってんだよ。合コンでしか会わないし」 「あ、ごはんの解凍終わった」  話が面倒になりそうだったので、食に逃げることにした。時任も食べてほしくて持ってきたんだし。いただきますと手を合わせ、箸を取る。 「……おいしい」 「だろ?」  肉が口の中でほろほろと溶ける。そのまま食べても甘辛さの塩梅が絶妙。煮卵も味がしみていておいしい。ごはんと一緒に口に含むと、優しい甘みがたまらなくて、いくらでも食べられそう。思わず無言で味わい続けてしまう。 「あー!」 「何?」 「ビール! 私の分!」  時任はビールを四本買っていて、二本飲めると楽しみにしていたのに。私が食べている間に時任は三本開けていたのだ。 「手持ちぶさただったから、つい」  そういうとこだぞ。お前に彼女がいないのは。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

225人が本棚に入れています
本棚に追加