【エピローグ~ふたりが紡ぐ永遠の物語~】

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★ 「ニーナ、どこの高等部を志望するか決めた?」  ヨハンはニーナと同じ進路を狙っていたのでそれとなく尋ねる。  ふたりの学力は均衡していたが、以前はヨハンのほうが成績はずっとよかった。一緒に勉強するようになってニーナは一気に成績を伸ばしたが、それがヨハンのプレッシャーとなっている。教えていた自分のほうが置いていかれるわけにはいかないのだ。 「うーん、でもあたし、お金がかかるところは行けないもんなぁ」  ニーナは孤児院で暮らしている。じいちゃんとばあちゃんの出身であるポンヌ孤児院だ。だから財を成したじいちゃんは孤児院に寄付をしているが、そのことをヨハンはニーナには内緒にしている。  ヨハンはニーナに告白し、前向きな返事をもらえたら、思い切って親にお願いしようと画策している。ニーナに出資して希望の進路を選ばせてほしいと。さらには将来のお嫁さんにしたいのだと。今はまだ結婚なんて出来ないけれど、約束だけだったら自由だ。常識は魔法戦争の時代ほどうるさくないはず。  ヨハンはニーナとの未来を想像してニヤニヤが止まらない。けれど懸念材料がひとつ。  ――じいちゃんだけには、将来の選択に口出しなんかしてほしくない。だって皆、じいちゃんの意見には逆らえないんだから。  役立たずの『英雄』の称号なんて、持っているだけ厄介だ。考えるだけで辟易し、顔の筋肉が脱力して重力に敗北する。 「ヨハン、顔が溶けたみたいになっているけど、どうしたの?」  いきなり正面から顔をのぞき込まれてびっくりする。 「えっ、あっ、いや……溶けちゃう魔法が勝手に発動しただけだよ」 「ひえっ、溶けちゃう魔法!? だめっ、ヨハンの顔戻ってきてー!」  ニーナはヨハンの頬をつまみ上げてあたふたとする。あどけない仕草がヨハンの心をかき乱し、心臓が奔馬のごとく走り出す。慌てて普通の表情に戻した。 「うそうそ、ただ考えごとをしていただけだって!」 「ほっ。――でも生粋(ギフテッド)って遺伝するんでしょ?」 「ああ、そうらしいね。ぼくにはわからないけど、ははっ」  ヨハンは自身が魔法の力を持っていることをごまかした。溶けるのではなく、魔法を『解く』魔法をヨハンは使えるのだ。  けれど魔法戦争後の時代では役に立たない能力だろうし、じいちゃんと同じ能力ということが癪でならない。若い頃のセリアばあちゃんのように、空を飛べる魔法が使えたらよかったのにと何度思ったことか。 「だいぶ進んだし休憩にしようか」 「うん。いつもありがとね~、ヨハン」  結局、勉強には身が入らなかったけれど、ヨハンはそれで構わなかった。なぜなら今日はふたりにとっての記念日になるはずなのだから。  ――よし、絶対に告白するんだ!
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