gift

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その後、僕はギムレットで彼と乾杯し、 ジントニック、モスコミュールと 定番のカクテルを煽った。 「久しぶりに、気持ち良く飲めたー」 最後に楊貴妃を飲み干すと、 彼を残してトイレに立った。 飲み始めて、2時間が経っていた。 用を済ませ、 洗面台の鏡に映った自分を眺めていると、 鏡に彼が映った。 「大丈夫?酔っちゃった?」 彼に声をかけられ、 僕は鏡越しに彼と目を合わせた。 「大丈夫。これくらいなら平気」 「ねえ。訊いてもいい?」 「何」 「今、恋人っている?」 「いや。実は、今夜振られた」 「やっぱり」 「やっぱり?」 「何だか、浮かない顔してるから」 そう言って彼が近づいてきた。 そして次の瞬間、背中から抱きしめられた。 「えっ」 「僕と、試してみる?」 彼に耳元で囁かれ、 すぐにアレのお誘いだとわかった。 こんなことって本当にあるんだ‥‥。 不意に佐橋の顔が浮かび、声がした。 『気晴らしにヤッちゃえよ』 お前に言われなくても。 佐橋の姿を打ち消すように身を翻すと、 彼の首筋に両腕を回した。 「忘れさせてくれる?」 笑顔で頷いた彼と迷わず唇を合わせた。 長く深いキスの後、彼が言った。 「岸野くん、復讐しようよ」 「復讐?」 「元カレのこと、後で教えて」 何故、僕が付き合っていたのが 彼女ではなく彼だとわかったのか。 それを確かめることもせず、 僕は本能のままに彼とキスを繰り返した。
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