gift

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佐橋雄大は、大学の同級生だった。 彼からのアプローチがきっかけで 恋に落ちた。 とはいえそれからの道のりは安泰ではなく、 3年という交際期間の中で 佐橋は何度も僕を裏切ってきた。 同級生の女の子との浮気がバレた時は、 「気晴らしにオンナを抱きたくてさ。 ひとりだけを愛するなんて、重いだろ?」 と独自の見解を示し、唖然とさせられた。 その他にわかっているだけでも3回。 たまたま目にしたスマホ画面のメッセージで 次の子がいるなと思い、問い詰めると、 佐橋はその度にあっさり認めた。 「岸野も一途にオレばかり見てないで、 つまみ食いすれば?」 悪びれもせず、そんな言葉を口にする佐橋を 僕は許せないと思いながらも、愛してきた。 いつかちゃんと自分に向き合ってくれる。 そう願っていたのに。 新卒で就職し、半年。 ずっと仕事だ接待だとデートを断ってきた 佐橋に久しぶりに会えた今夜、 失恋してしまうとは思わなかった。 まあ今まで付き合えていたのが 不思議なくらいではあったが‥‥ 結局、まともに自分の本音を出せなかった。 だから寂しいというより、悔しかった。 地上に続く階段を登り、雨空を見上げた。 カフェに入った時は降っていなかったのに。 あいにく傘はない。 駅まで走るかと、霧雨の中を飛び出した。
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