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電車を乗り継ぎ、20分。 自宅の最寄駅に降り立ったが、 そのまままっすぐ帰りたくなくて 雨を避けながら 自然と足が向いたのは1軒のバーだった。 月に何度か1人で飲みに行くその店は カウンター席が7つ並ぶだけで、 行けば顔見知りの誰かと会い 適当に話して帰れる居心地の良さがあった。 今夜は誰がいるかなとドアを開けると、 見慣れない男子が1人、 カウンターの中のマスターと談笑していた。 「こんばんは。いらっしゃい」 マスターに声をかけられ、頭を下げた僕は、 こちらを振り向いた男子と目が合った。 色素の薄い髪と瞳、通る鼻筋。 耳のピアスに、黒のセットアップ。 うわ、超イケメンだ。 思わず口元が緩んだ僕に彼は微笑み、 手招きをした。 「一緒に飲みましょう」 「あ、はい」 カウンターの椅子を引き、彼の隣に座った。 「初めて、お見かけする顔だけど」 「確かに。岸野さんとは初めてです」 「僕を知ってるの?」 「ちょうど、マスターと話してました」 「え、何の話?」 「ふふ。内緒です」 彼はそう言って マスターとアイコンタクトをした。 「僕は川瀬と言います。川瀬由貴」 「川瀬くんは僕より若そうだね。いくつ?」 「22です」 「大学生?」 「はい、4年生です」 「僕よりひとつ下かあ。タメ語でいいよ」
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