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「で。元カレのこと、教えて?」 午前2時、ベッドの中で。 うっすら汗をかいた彼が、僕を抱き寄せた。 「というか、何で彼氏だってわかったの」 「空から見てた」 「冗談はいいから」 「あはは」 「マスターにどこまで訊いてる?」 「いや。岸野くんていう常連さんがいる、 それだけだよ」 「そうだよねえ、マスターに話してないし」 マスターにはこの街に住んでいること、 都心の会社に通う新卒ということしか 話していない。 「空って何だよ、全く」 「嘘じゃないよ、僕は天使だから」 「はあ?」 「大学生やりながら、天使のバイトしてる」 「いくら何でも、突飛すぎるよ?」 「そのうちわかるって。で、元カレの話」 「大学の同級生だけど」 「名前は?」 「佐橋雄大」 「どこの会社?」 「中央区にあるK不動産っていう大手」 「わかりました」 「何するつもり?」 不安に苛まれ、僕は眉を顰めた。 「空から見てくる」 「それはもういいから」 苦笑いし、彼の胸を軽く一突きした。 「佐橋のことは忘れる」 「そうだね。僕が忘れないでおくよ」 彼から意味深な言葉を聞いて、 僕は首を傾げた。 「絶対に、会いに行かないでよ?」 「はいはい」 「怪しいなあ」 「大丈夫。岸野くんには迷惑かけない」 「絶対だからね」 「とりあえず、契約締結しよ?」 「ん?」 「天使との契約」 「自分が何言ってるか、わかってる?」 「岸野くん、どっちがいい?」 「何が」 「恋人契約か、セフレ契約か」 「話が突飛過ぎて、ついていけない」 「恋人契約ならオプションがあります」 「何のオプション?」 「時間がかかりますが、未来永劫僕との 縁が約束されます」 「さっぱり意味がわからない‥‥」 「オススメはやっぱり、恋人契約です」 「じゃあそれで」 あー面倒くさっと彼の腕から逃れ、 ベッドに横になった。 それでも久しぶりに抱かれたら、 心は満たされていた。
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