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まだアーロンの話をどう理解すれば良いのかはわからない。
でも、私には心配なことがあった。
「もし、金星に一緒に行くってなったら、もう二度と家族には会えないってことだよね?」
「心配はいらないよ。長期の休みだってもちろんあるんだから。そういう時に戻って来れるよ。」
「えっ…そ、そうなの?」
アーロンは落ち着き払って、うんうんと頷いてる。
「それに、もう何年かしたら、地球に長距離転送装置を設置するって話があるんだ。」
「なに、それ?」
「金星から地球に瞬間移動する装置だよ。」
「そ、そうなの…?そうなったら便利だね。あ…でも、私…金星の言葉わからないけど。」
「大丈夫。脳に翻訳機を埋め込めば良い。もしくは、催眠学習だね。」
アーロンはいとも簡単にそう答えた。
「じゃ、じゃあ、住む所は?」
「食べ物は?」
「酸素はあるの?」
思いつくままに、私はいろいろ質問したけど、アーロンは澱みなくそれに答える。
「他に何か質問は?」
「……ない。」
「何か心配なことはあった?」
「……ない。」
「じゃあ、大丈夫だよね?」
「……はい。」
それから数週間後…無事、結婚式を済ませた私達は暗い山道を車で走っていた。
それは、このあたりでは『UFO山』と呼ばれている場所。
「ここに基地があるの?」
「そういうこと。」
突然、山の斜面が左右に開き、車はその中に入って行って、エレベーターのようなもので静かに下がって行った。
「うわぁ…」
広い空間には、輝く銀色の丸い宇宙船が、何台も停まっていた。
(アーロン…本当に金星人だったんだ…)
「さ、行こうか。」
アーロンの差し出した手に、私は恐る恐る手を伸ばした。
怖い気持ちはあるけれど…えーい!女は度胸だ!
スーッと音もなく開いた扉から中に乗り込む。
振動もなにもないけど、窓の景色が急に変わった。
そこに見える青い星は、地球…
(さようなら…また戻って来るからね…)
青い地球はどんどん小さくなっていった。
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