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イレーナが庭園の散歩から戻ると、侍女と使用人たちが出迎えた。
「それでは湯浴みをいたしましょう。今夜は特別高級な香油をご用意いたしております」
侍女に言われて連れてこられた風呂場は甘い香りに満たされていた。
浴槽には湯が張られており、ピンクの花びらがいくつも浮かんでいる。
使用人たちがイレーナの手足を香油で揉みほぐしてくれる。
そして侍女はイレーナの髪を梳いた。
「いい香りね」
イレーナはかぐわしい花の香りを吸い込み、ほうっとため息をついた。
公女といえどもこれほど高価な香油を使ったことがない。
甘い香りだが少しつんとくる刺激もあり、艶めかしさを感じさせる。
「これは陛下が大変好まれている香りでございます。きっとお気に召していただけるでしょう」
侍女のその言葉にイレーナはどきりとした。
最後のお気に召していただけるというのは皇帝陛下に向けた言葉だ。
つまり、この香りに包まれたイレーナを気に入ってもらえるという意味だろう。
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