11、アンジェ、動く

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「アンジェさま、あの妃とお茶会だなんて、わざわざそんなことしなくてもよろしいですのに」  アンジェがイレーナとの茶会を決めると侍女は不服そうな顔をした。 「あんな妃に気を使うことないですよ。目立ちたがりで立場をわきまえない本当にいやらしい人間だわ。どうせ陛下に色目を使って迫っているに決まっています」  ぶつぶつと文句を言う侍女の言葉をアンジェは無視した。  そして、鏡台(ドレッサー)の棚にひっそりと隠しておいた赤紫の透明容器をじっと見つめる。 「一度痛い目に遭えばいいんだわ。二度と陛下にお近づきになれないように」  愚痴の止まらない侍女に、アンジェは冷静に話しかける。 「ねえ、あなた」 「は、はい。何でしょう?」 「わたくしの命令を必ず聞くと約束できるかしら?」  侍女はぱあっと明るい表情になる。 「もちろんでございます。私はアンジェさまの命令は絶対だと思っておりますから!」  アンジェはにっこりと穏やかな笑みを浮かべる。 「そう? よかったわ。必ず私の命令に従ってね」 「はい。承知いたしました!」  そして、アンジェはイレーナとの茶会を開く。  ちょうど、皇帝が遠方へ視察へ行く時期を狙って。
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