1、冷徹な皇帝陛下の側妃になりました

4/9
2625人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ
「おもてを上げて顔をよく見せてみろ」  イレーナは緊張ぎみに顔を上げる。  ヴァルクの紅い瞳と視線が交わり、どきりと胸が高鳴る。  手のひらにじわりと汗が滲む。  イレーナはなんとか震えを止めて、いいと言われるまでヴァルクから目をそらさなかった。  けれど、ずっと威嚇するような目で見つめられてはそろそろ精神(メンタル)が限界だ。 「ふむ。なかなかいい(ツラ)をしている」  ヴァルクはふっと笑みを浮かべた。  それにはイレーナも周囲の家臣たちも驚愕した。 「陛下が笑っていらっしゃる」 「この妃の顔が気に入られたのではないか?」 「この様子ならすぐに跡継ぎがお生まれになるだろう」  イレーナは複雑な心境になった。  皇帝の妻になるのだから、当たり前だが覚悟はしている。  しかし、未知のことなので緊張もする。 「イレーナ、今夜お前の寝屋へ行く」
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!