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顔を上げると男と目が合った。塀のこちら側に、片足だけ突き出した男。考えるまでもなく、これはまともな姿勢ではない。
「何してんの、あんた」
声をかけても微動だにしない。生きてんのか? なんてとこ疑いだして、ほんの数秒後、なんの刺激も与えなかったのに、男は勝手に落ちてった。
音からすると下は草。大した怪我はないだろう。
いろいろな点を考慮に入れた上で判断するに、同年代。ただならぬ良いお召し物の説明は、お土地柄ということで片付くが。ん? 片付くか?
「……なんだかな」
口に出して宙に放ち、ごちゃごちゃ考えるのはやめにした。新たに進んで抱え込むまでもなく、なかなか忙しい身の上だから。
青い空。雲が流れる。
そんで、オレは仕事中。
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