森にくまさん

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 そして現状。  この良水様がお命を狙われていらっしゃる、と峰丘さんって人は訴えていると。機関に調査を依頼したことを、もちろん敵に、そして財閥のどろどろ世界なので、誰にも知られたくはないと。    結果、屋敷内に入って行くのを目撃されても深読みされる心配のない人材を、といえば矢が刺さるのは『ご学友』設定が有効なオレたちだ、と。  この時点で、資料に目を通したはずの恵子に比べて、オレはかなりのリードを見せているだろう。恵子サン、分析とかできないヒトだから。 「鳴海様、汐崎様」  ハイ? 「あっ」  右手の柵の向こう側に声の主が見えて、恵子は叫んで駆け寄った。 「こちらです。どうぞ」  とおっしゃられているということは、こここそが目的地の財閥進藤のお屋敷か。  向かい合う二人は柵を間に、ビジュアル的には身分違いの恋人同士に見えないこともない。そういった場合、身分の低い娘さんは美少女に限るのだ。それでこそ悲劇性が増すというもの。  屋敷の中の、男の身長は百八十ちょい程度。スニーカーを履いたオレとこんな程度の差だというところから割り出した数字。  子供サイズの恵子とは、絵としては少々美しくないのだが、見下ろすその目には確かに優しさが込められていた。
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