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年齢からして良水様ではない。だがしみじみと、良い雰囲気のイイ男だ。おそらく、良水様の個人秘書か、良水様の持ち物であるお屋敷を総べる執事的立場にある人間だろう。
本人にアクがなく、すれたところが感じられないか、あるいは感じさせない術を心得ている。
高度な教育を施され、広範囲に学問を修めているのではないだろうか。
そもそもの生まれからして、庶民とは決して言えないはず。ありがちなところで、良水様のために育てられた影だとか。
以上一通り推測が通り過ぎた頃に、現れた男は軽く礼をし、名を告げた。
「峰丘です。鳴海様とはお電話でお話しましたね」
「えぇ、はい。声でわかりました。遅れてしまってすいません。少し、迷ってしまって」
よそゆき恵子の発言には微笑みで応える。手の中に握りこまれた何かを使い、上下二ヶ所のロックを外す動作。
連続していて当たり前の柵が途中からばっさりと切り取られ、内と外とが繋がれた。
「お入り下さい」
どこの果てだか、門まで回らずここからどうぞ。長い長い柵の何ヶ所ぐらい、こんな切れ目を作ったのだろう?
時計を見れば、遅れた時間は十五分近い。どちらからおいでになるか割り出して、秘書殿はお迎えに現れたというわけか。
それは正しい選択だ。さらに十五分を費やしたところで、たどり着いていたか怪しすぎ。
「ありがとうございます。助かりましたー」
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