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「この辺はわかりにくいですからね。やはり車でお迎えにあがるべきでした。至らなくて申しわけございません」
「お断りしたのは私です。謝らないで下さい。歩いて行くといろんなお屋敷が見れて楽しそうだと思ったんですよね。だけど間違いでした。おうち探してるのにそれは無理ですよね」
「お帰りの際には車でご案内しましょう」
「わぁ、すいません。やっぱり芸能人の人とかの豪邸とかがあるんですよね?」
「恵子」
「え、なに。私、しゃべりすぎ?」
「そんな簡単に気付くんだったら、途中で自分で気付けっつの」
「はいはい。うるさいなぁ、しおやんは」
声は聞こえなかったが、背中が揺れていた。笑っているね? 峰丘さん。
お車でのお迎えを辞退した話は決して忘れずに、後で必ず文句をつけよう。そういうことは、おまえが決めるべきじゃない。
「改めましてご挨拶を。峰丘周(あまね)と申します」
「鳴海恵子です」
「汐崎です」
峰丘氏は手を伸ばし、オレたちは順に握手を交わした。力強さが多少意外。もっとも意外は、かなり手前にもっとずっと大きな物があるのだが。
こんな豪邸抱えた大財閥の当主の客を迎える役目をいただける使用人ともなると、ESPなんかにも怯んだりはしないらしい。
存在を認め、その力を利用することはしても、手を差し出そうとはしない人間も多いことを、オレは身を持って知っていた。
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