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「あ、ご、ごめん」
すっかり足を捻ったことを忘れていた。気まずい雰囲気で真っ赤になりながら救急箱を受け取ろうとしたが、桃香先輩は立ち上がって俺に近づくと、耳元で「先に会場に行く」と言ってさっさと出て行ってしまった。
「いいの?」
「……うん。先に行ってるって」
できることなら、こんな雰囲気のところに置いて行ってほしくは無かったけど、相良先輩に急ぐように言われていたから仕方が無い。
「足は大丈夫?」
「ああ、うん。忘れてたぐらいだから、大丈夫」
「それでも、一応湿布はしておいた方がいいよ」
「ありがとう」
春が救急箱から湿布を取り出すと、足首に貼ってくれて、包帯で固定してくれた。立ち上がっても、さほど痛みは無くて、「もう、走り回ることも無いから大丈夫だよ」と苦笑いで言うと、「そうしてね」と言い返された。
春と一緒に寮監室に救急箱を返しに行き、それから会場の講堂に向かった。
「上野は?」
「ん~……清水が連れて行った。清水かなり怒ってたけど……冬休み中には処分を決めるって相良先輩が言ってた」
「そうなんだ」
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