声を聞かせて・２

クリスマスまで

　そうだと思いついて、質問した。
「あの、桃香先輩はどれが好きなんですか？」
　よく買うケーキはどれだろう。
「桃香様ですか……そうですね。クリームやムースが多いですね。ああ、今日のケーキだとこれがいいと思いますよ」
　指差されたのはモンブランだった。黄色の細いクリームの上には緑と赤い飾りがつけてあって、いかにもクリスマスという感じだ。
「見た目はモンブランですけど、中身は細かく砕いた栗が入ったムースです」
「じゃあ、これ」
　トレーに乗せると、「こちらもお好きですよ」と次は赤いケーキを指差された。
「これはカシスを使ったムースです。甘酸っぱくて甘さを抑えたケーキです」
　それもトレーに乗せるが、「これも」「これも」と言われて、「こんなに食べられないですよ」と言うと苦笑いで、「そうですね」と返された。
「これって、寮に持って帰ってもいいですか？」
　トレーのまま持って帰ろうとテーブルを離れると、ちょっと待ってくださいと呼び止められた。
「箱にお入れしますよ」
　トレーを俺から受け取ると講堂を出て行ってしまった。