人とロボット

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人とロボット

 ルカはスマホのアラームで目を覚ました。  時間は地球標準時の7時。始業は9時で、それまでに身だしなみを整え、朝食を取ることになっている。  宇宙では、朝に日が昇って夜に日が沈むといったサイクルはない。銀河によって光源となる恒星も異なるため、それぞれの生活圏に応じて標準時が設定されている。  地球圏で登録されている船は、主に地球標準時が用いられていて、グリニッジ標準時と同じになっている。  銀河によって、一日の長さも一年の長さも異なる。地球人や地球人と親しい星では地球の暦が使われていて、一つの標準とはなっている。しかし、生活のサイクルを地球人に合わせるのは困難なため、地球の暦を換算して使うこともあるが、だいたい現地の暦をそのまま使用している。  ちなみに地球では西暦を廃して、人間が宇宙で生活するようになった年を起点として宇宙歴が制定された。宗教の創始者の年齢を数えるのはあまりよろしくなく、新たに共通の暦に変えたほうがよいとされたのだった。  ルカは地球生まれ、地球育ちなので、地球時間が使われているのは非常に助かっている。一カ月まるまる寝ない星もあるようで、合わせるのはやはり難しいと思ってしまう。 「ふわぁ~」  ルカはあくびをして背筋を伸ばす。そしてパジャマから部屋着に着替えた。  勤務中の服装は自由で、みんなカジュアルな格好をしている。乗組員は全員女性なので、気遣う必要がなくて楽だった。  それぞれの個室は6畳ほど。ファミリー向けの船としては標準的なサイズである。ルカはスーツケース一つ分しか荷物がなかったので、部屋には備え付けの机とベッドぐらいしかなく、かなり殺風景であった。  机の上には家族写真。ルカの父と母と映っている。豪邸を背にして、きらびやかなドレスを着ている。  ルカは写真立てを伏せようとしてやめた。  もうお飾りのお嬢様ではない。髪を切って生まれ変わったのだ。昔の自分とは距離を離したいが、家族を捨てたわけではなかった。家族のことは気になるし、向こうもおそらく心配しているだろう。 「瑠華子は元気にしております。お父様もお母様もお健やかに……」  もし心配などせず、もう忘れてしまっていたら……。勝手に家を飛び出したのは自分だが、そうなっていたら非常に悲しい。しかし今はいつか胸を張って再会できることを祈るしかない。  ルカは写真の両親に挨拶を済ませ、ダイニングルームに向かう。 「おはようございます!」 「おはよう」  ダイニングルームには文乃がいて、キッチンから料理を運んでいるところだった。  食事は当番制になっていて、今日の朝食担当は文乃だった。 「早いね」 「割と目覚めはいいほうなので! わー、おいしそうですね!」 「いやいや、お粗末なものだよ」  朝食はハムエッグとトーストという簡素なものだった。みんな朝はあまり食べないのだ。  ルカが席に着こうとしたとき、「ウー! ウー! ウー! ウー!」と、けたたましく警報が流れた。
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