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軌道エレベーターの地球港にたどり着いた。
本当は空港から地球港へは無料でシャトルバスが出ていて、すぐにいくことができた。しかし彼女は海を見たいと思ってしまい、ものすごく遠回りする羽目になってしまっていた。
地球港についてすぐ、求人掲示板を確認する。
見た目は子供っぽく見えるが、戸籍上はれっきとした大人である。仕事さえ見つかれば問題なく就職できる。
地球港はいろんな人が集まっているため、仕事も多い。これから宇宙に出る人をターゲットに、様々な求人情報がデジタル掲示板に表示されている。
端末を操作して、自分に合ったものを探していく。
「うーん……。とりあえず、『住み込み』希望っと。業種、職種は……なんだろう……。あっ、できるだけ遠くの勤務地にしたいな」
これまでに仕事をしたことがなく、自分に何ができるか分からなかった。どんな仕事でも頑張ろうとは思うが、親に見つからないよう、遠くに行きたいという希望はあった。
期間や給料などの条件も入力していき、検索結果が徐々に狭まっていく。
そして、その中に変わったものを見つける。
「なにこれ……」
見出しに「その冒険心で銀河に羽ばたこう!」と書いてあった。
「羽ばたくって何? 何のお仕事?」
記載内容を確認すると、「勤務地、宇宙船内。銀河のどこでも行きます」と書かれている。
「乗組員ってことなのかな? 輸送船? あ、でも職種は『ライター募集。未経験可』って。船の中で何か書くのかな……? 航海日誌?」
他には「やる気のある方」「宇宙旅の好きな方」と条件が書いてあるが、どんな仕事なのかまるで見当がつかなかった。
「うーん……。悩んでもしょうがない。ここにしよう」
怪しいとちょっとは思ったが、「その冒険心で銀河に羽ばたこう!」というフレーズが気に入っていた。
アバウトで月並みなフレーズだが、今の自分にぴったりだと思ったのだ。勇気をもって前に踏み込む。あまりにも窮屈で息苦しかった世界を飛び出し、広大な銀河に旅立っていく。
「ドキドキ不安に感じるのはまだ経験してないから!」
こうして外界に出るのも、一人旅をするのも、仕事することも全部初めて。とりあえずやってみるしかないと、自分に言い聞かせる。
人間が宇宙で活動するようになって200年が経ち、輸送船で勤務する人は多く、宇宙の旅は珍しいものではなくなっている。宇宙船に乗らず生涯を終える人はあまりいない。
しかし、長期の宇宙船勤務はハードで、狭い船内は息苦しく、同じ人間に毎日顔を合わさなければいけない。そして宇宙空間では一歩間違えばすぐに死が待っている。そのため、宇宙船の仕事はもしものことを考えて、ある程度覚悟を決めなければいけない。
だが、住み込みで遠くの星に行けるのは、彼女にとってこれ以上の条件はなかった。
求人情報には電話番号も書いてあったが、彼女はスマホを持っていなかった。両親に居場所を追跡される可能性があったので、飛行機に乗る前に捨てていたのだ。
所在地が「モルディブ宇宙港」とあったので、なけなしのお金を払って軌道エレベーターに乗って宇宙港に向かった。
そこで宇宙港のスタッフに頼んで、電話をつないでもらう。
船の名前はラクーアクアリー。社名はフリークエントリーという。
「すみません、採用の件でお話をうかがいたいのですが」
「採用? ン……マジでっ!?」
電話越しに絶叫され、耳が痛い。相手は若い女性のようだった。
「すぐ来て! C32番ドックにいるから!」
そう言われてすぐに電話を切られてしまう。
「歓迎されてるってことかな……?」
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