プロローグ

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「文乃、なにその子?」  そこに船の格納庫から出てきたのは、エルフの女性だった。  エルフ族は耳が長いのが特徴で、地球人よりも一回り背が高い。金髪碧眼の長身で、地球人の理想を具現化したような容姿とよく言われている。  ファンタジー世界でよく登場するエルフと見た目やイメージが酷似しているため、太古に地球に移民していたという説がある。エルフが住む星にはオーク族もいて、最近まで戦争を続けていた。しかし、エルフやオークには外宇宙に出る科学技術はなく、酷似しているのは偶然の一致ということになっている。 「可愛い! 地球の小学生? もしかして……文乃の隠し子!?」  エルフの女性は歓喜の声を上げて、ルカの手を取る。  ルカは突然、若い美人エルフに手を掴まれてドキドキしてしまう。エルフというのはそれだけ美形で、地球人に好かれる外見なのだ。 「んなわけないでしょ」  と言って、文乃がエルフの頭をはたいた。 「面接に来た方」 「えー、そうなの?」  エルフは急に興味をなくしたような声を出す。 「星川ルカと言います! よろしくお願いします!」  このエルフはどうやら船のクルー、つまり社員のようだった。ならば元気よく挨拶をしないといけない。  しかし、相手の反応は悪かった。 「小学生だか中学だか知らないけど、やめたほうがいいよ」 「えっ……」  ルカは突然現れたエルフの女性に否定され、びっくりしてしまう。幼く思われるのは慣れているが、年齢を理由に断っているわけではなさそうだった。  ここで引いたら、採用を勝ち取れないことはルカにも分かる。  圧迫面接。面接者のいろんな反応を見るために、役割として優しい面接官と厳しい面接官がいる。きっとエルフは否定されたときの反応を試す立場なのだ。 「小学生でも、中学生でもありません。これでも16歳で高校を卒業してます!」 「飛び級? 頭はいいのね。夢を追いかけようとして、親と喧嘩して家出ってところ? 捕まらないようにどこか宇宙に遠い宇宙に逃げようと思ってるだろうけど」 「う……」  エルフに完全に言い当てられてしまう。 「お嬢様がやりそうなことね。地球育ちなんでしょ? 宇宙を甘み見過ぎ。それに、仕事に家庭事情を持って来られても迷惑なんだけど」  文乃とじゃれていたときの声とはまったく違うクールな言葉に、ルカは心を貫かれる。大きく開いた透き通った碧眼に、何でも見透かされていそうだった。  だが至極正しい意見だった。悲しいけれどルカもそう思ってしまう。家出少女を雇うメリットなんてないのだ。
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