トライブラッド

バラの騎士

　欧州東部G国と中東T国の国境付近、大型人型兵器EXM(エグザマクス)による戦闘が4時間を経過した

「ローゼンリッターよりライブラ、侵略者(バイロン)1個中隊の無力化及び戦闘放棄を確認。回収部隊と医療チームの派遣を要請、合流次第帰投する」

『了解、そちらの損害を報告せよ』

「被弾軽微、残り燃料30%左腕モーター壊れたかも？支援人形(シスター)がチェックしているから後はそっちに聞いて」

　ローゼンリッター(バラの騎士)、赤い機体に脚に金色の十字、右肩に角の様な突起と格闘用の大型ハンドが特徴の元アルトタイプEXM。試験的に導入された動作追跡機構(ムービングトレースシステム)通称MTSを搭載しているのだがパイロットの動きに追い付けずに関節モーターの損傷が高い、本来ならメーカーから新規部品と入れ替えれば早いのだが戦場を転々とする遊撃部隊アストライア隊にとって新規部品を待つより鹵獲(ろかく)した機体から流用した方が手っ取り早いのである

『ガヴィ、聞こえるかい？』

「感度良好(聞こえるわ)よ|隊長(マム)」

『回収が終わったらG国に帰還する、オーバーホールするから帰ったらコクピットの掃除しとくんだよ』

「イエス、マム」

　隊長(マム)への報告が終わるとローゼンリッターの点検の為にコクピットの外に出ていた支援人形(シスター)のラトから連絡が入る

『ガヴィ』

「どしたの？」

『左肘モーターはもうダメね、モーターから油圧に変えたから無茶出来ないわよ』

「そっかー、今度のオーバーホールでどれだけマシになるかなぁ？」

『さぁ？地球でもバイロンでも無い未知の技術を実戦にまで持ってきただけでも凄いと思うけどね』

　そこに軍用通信が入る

『ライブラ2よりローゼンリッター、応答せよ』

　通信の声を聞いてガヴィの顔が乙女に変わる

「はいはーい、アタシは無事ですよぉ少佐」

『予定エリアには後30分で到着する、医療キャラバンと水質濾過(ろか)コンテナと仮設病棟一式を降ろす場所を確保しといてくれ』

「了解っ！あんまり女の子を待たせないでよね？」

『分かりましたよ、着陸位置の詳細お願いしますルーニー大尉』

「おっけーおっけー。ラト、少佐に詳細な位置送っといて、アタシは避難民と怪我人に報告してくる」

『了解、肉体言語で報告しないでね』

「相手の出方にもよるかな？極力言葉でやってみるけどw」

　ガヴィはローゼンリッターから降りて、地域住民が避難している街の大型病院に向かう。バイロン軍は地球に侵略しておきながら正規軍だけは非戦闘員や医療施設には手を出さなかったしさせなかった

「地球連合、欧州遊撃部隊アストライア隊ルーニー大尉です！」