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どこを見ても負の数字が並んでいた。駄菓子より単価が高いから粗利金額の違いはあるものの、販管費を差し引いた最終的な利益は桐島駄菓子店よりはるかに悪い。
思わず誠一をじっと見ると、誠一はこてんと首を傾げた。
「えへへ」
何を可愛く笑っているのか。
休日なのに十二時開店なんて、この赤字でよくも強気な経営ができたものだ。
「よし! まずは帳簿を整えましょう! とりあえずうちの書式で!」
「初日からそんな凄いことをやってくれるんですか。とっても助かります」
「任せて下さい。ちゃんと損益勘定して無駄を削減すればどうにかなりますよ!」
これだけの店を長く続けているのなら、帳簿が汚いだけできっと本来は黒字になっているはずだ。店というのは家賃や水道光熱費など固定費があるから常に赤字で何年もやっていくことはできない。
整えてどの程度の黒字か理解すれば誠一がお客様へ提供できる商品も増えるかもしれない。それは桐島駄菓子店としても知りたい技術だ。
薫子は気合を入れたが、翌日には信じられない状態が訪れることをまだ想像もしていなかった。
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