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「ご経験を活かせる最高の環境をご用意します。お嬢様にはカフェーのウェイトレスをお願いできれば大変有難い。土地の方がいらっしゃるのは安心感があります」
「それならうちも賛同したって見えますもんね。楽に客を集められるし!」
「薫子、止めなさい。これはいつ頃の予定ですか」
「増築に着手し完成すぐにでも。一年はかかりません。もちろん桐島さんの新しいご住居は私共が保証いたします」
それはつまり、桐島駄菓子店どころか家ごと消えろということだ。
薫子は怒りで立ち上がりそうになったが、父が薫子を制するように肩を抱いた。
「少し考えさせてくれませんか。今すぐ答えは出せません」
「もちろんです。またお伺いさせて頂きますのでお目通し下さい」
男はパンフレットと、手つかずの白い箱を父に差し出した。
礼儀正しくお辞儀をして帰って行ったが、姿が見えなくなったところで薫子はがんっと思い切り机を叩いた。
「何よあいつら! 信じられない!」
薫子は怒りをあらわに叫んだ。当然父もそうだろうと思ったが、父から出てきた言葉は思っていたものとは違っていた。
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