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「・・・・・」
マリアの話を聞いていた私は、表情を無くしていたかもしれない。
「あなたはね、こっち側にはいないけど、あっち側にも立てないでいる」
千夜子が追い打ちをかけるように言った。いじめてやろうという雰囲気がない分、私の胸に、ズシリときた。
「ならいっそ、こっちにくれば、と思うんだけどね。あなたなら、永い歳月を歩いていける胆力もありそうだし」
マリアが、まるで趣味のサークルへの勧誘のような気安さで言ってくる。
私はぎゅっと手を握り、大きく息を吸った。肩を上げ、息を吐くと同時にすとんと落とす。
少し動揺が収まった。
マリアと千夜子を見た。この世のものとは思えない雰囲気の美少女二人。生の理から外れた二人。
私は首を振った。
「私は・・・それでもここを歩きます」
私の言葉を聞いて、マリアがにっこりと笑った。
「また誘うわ」
マリアの隣りで、千夜子が愉快そうにこちらを眺めていた。
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