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Sparkling Birthday-13-
ベッドから出た僕は、いつまでも裸でいるのはどうかと思い、脱いだ、というか、脱がされた服を探すことにした。
廊下に出てリビングへ行くと、スーツとネクタイがハンガーにかけられた状態でドア横のポールハンガーに下げられていて、その下には仕事で使っている僕の鞄がその支柱に立て掛けられていた。
ソファーの上には綺麗に畳まれた僕のシャツと下着類があり、よく見ると、シンプルな革製のキーホルダーがついた鍵と、手書きのメモが1枚、服の上に乗っていた。
「俺が寝ている間に帰るのなら、鍵はマンションのエントランスにあるポストに入れておいてくれ」
意外にも少し丸みのある可愛らしい字で、メモにはそう書かれていた。
メモと鍵をローテーブルの端に置き、畳まれていたシャツ広げると、どうやら洗濯してくれたようで、柔軟剤の華やかな香りがした。
社内で彼とすれ違った時、いつもふわりと香っていたのはこれだったのかと思った。
些細なことではあるけれど、彼のプライベートな一面を知ることができて嬉しい。
頭の中も心もふわふわとした状態で下着とシャツを身につけ、スラックスに脚を通してベルトを締め、洗面台で顔を洗ってボサボサだった髪を整え終わった自分を鏡で見た瞬間、急に現実に引き戻されたような気がした。
この数日間に起きたこと、何度も彼に抱かれたことが、まるで夢の中の出来事だったかのような感覚。
でも実際にはまだ僕は彼の部屋にいるし、歩くたびに彼を受け入れた部分が痺れるように痛む。
夢じゃない。
どういう意図があって彼が僕を抱いたのかはわからないけれど、誰かの代わりとか嫌がらせで抱いたわけではなさそうだと思った。
「来週説明してやる」
彼はそう言っていた。
僕が見たのは彼女ではないのだとも。
いろいろ聞きたいことはあったが、そういえば彼が説明しようとしていたところで自分が無意識だったとはいえ遮ってしまったのだということを思い出し、僕は唸りながら頭を抱えた。
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