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Sparkling Birthday-15-
僕は寝室のドアを軽くノックして、なるべく音を立てないようにそっと開けた。
ドアの隙間から顔だけを覗かせて室内を見ると、眠っていると思っていた彼はすでに目を覚ましていて、ベッドの上に片膝を立てて座り、スマホの画面を見つめていた。
「なんだ」
スマホをシーツの上に置き、こちらを見た彼の顔にはなんの表情も浮かんでいなかった。
「帰ったんじゃなかったのか」
迷惑そうではなかったものの、その言い方は淡々としていた。近づくことを拒否されたわけでもないのに、彼のそばに行こうとしていた僕の足はその場で止まった。
「そのつもりだったんだけど、鍵、下のポストに入れるのは不用心だと思って」
僕はドアの前に立ったまま言った。
「……そうか」
彼は短くそう言うと、腰まで掛けていた布団を捲り、ベッドから降りて立ち上がった。
何も身につけていない彼の体の中心には勃ち上がりかけているものがあり、僕の目は自然とそこに釘付けとなった。
この数日間、僕はあれを何度も受け入れていたのだ。
「ああ、これか、寝起きだからな」
僕の視線に気づいた彼は、片手で自身を軽く摘みながら言った。
「お前だって男なんだからわかるだろ、気にするな。ただの生理現象だ」
そう言いながらクローゼットからスウェットを取り出した彼は、素肌の上に直接それを履いた。
下着をつけていないからか、形がはっきりと浮き出て卑猥さを増している。
僕はそこから目を離すことができなかった。
自然と僕の呼吸は荒くなり、唇から漏れ出る息は熱かった
欲情している。
そう思った直後、不意に顎を持ち上げられ、いつの間にか目の前にいた彼と視線が絡み合った。
「そんな顔をするな」
少し乾いた唇が降りてきて、僕の唇をそっと塞ぎ、そしてそれはすぐに離れていった。
僕は離れていく唇を追いかけるように彼の胸に縋り、つま先立ちになり、今度は僕の方から彼の唇を塞いだ。
一度離したけれど足りなくて、もう一度、となったのだが、彼の指に優しく遮られ、それは叶わなかった。
どうして、と思いはしたものの、悲しい気持ちにはならなかった。
なぜなら、僕の腰のあたりに、ドクドクと脈打つものが当たっていたからだ。
「これ以上はやばい」
彼は苦笑いを浮かべながらそう言うと、僕の腰に腕を回して玄関へと誘った。
「下まで送ってやりたいが、今日はここで許してくれ」
「僕のほうこそ……ごめん」
カバンを持ち上げる際、視界の端に入ったのは、限界まで伸びているであろうスウェットの生地と、浮いたウエスト部分からわずかに覗いた黒い叢だった。
「じゃあまた明日、会社で」
やや掠れ気味の声で彼が言った。
「ああ、また明日」
僕は俯いたまま答えた。
玄関のドアを閉め、廊下を歩き始めても、内側の鍵が締まる音は聞こえてこなかった。
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