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Sparkling Birthday -2-
俺が祝ってやる。
そう偉そうに言っていた彼は早々に酔い潰れ、
今は今日の主役であるはずの僕に膝枕をさせている。
最初はリビングで、ローテーブルを挟んで向かい合わせに座っていた。
テーブルの上にはいくつかの料理と、彼が買ったチョコレートケーキによく冷えたスパークリングワイン。
料理は彼が前もって下拵えしておいたものを、帰宅してから手際よく調理したできたてのものだ。
「お前は気にしなくていい」
料理を食べ終わり、スパークリングワインを飲みながらケーキを食べていると、彼が唐突に言い始めた。
「周りなんか気にしないで、お前はお前らしくしてればいい」
「……なんの話だ?」
「俺はどう思われても構わない」
彼はそう言うと、僕の左隣にドカリと座り、胡座をかいていた僕の膝に頭を乗せた。そして、左手で僕の頬に触れ、指の背で何度か撫でながら言った。
「悪いことしてるわけじゃないんだから、隠そうとしないで堂々としてればいいんだよ」
彼は手のひらで僕の頬を包み、肌スベスベだなと言って軽く笑った後、酔っているとは思えないほどの静かな声で聞いてきた。
「お前が隠していること、俺が気づいてないとでも思ってるのか?」
「別に僕は……」
なにも隠してなんかいない。
そう答えようとしたが、なんの曇りもない彼の双眸に嘘をつくことはできなかった。
僕が言葉に詰まっていると、彼はあくびをひとつして、すぐに寝息をたてはじめた。
無理やり起こすのもどうかと思い、そのまま膝の上で寝かせておくことにした。
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