経験値活用要素

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経験値活用要素

9aa8e5a6-2035-4b93-b4cd-7e85c8d94d3a 私の記憶にこの世界とそっくりな世界観の作品は無かったものの この世界がゲームやラノベの世界ではないという確たる証拠はない。 万が一この世界がゲームやラノベの世界だった場合は、主人公や主要人物達は国立学園ではなく王立学園へ通う可能性が高いだろうと思う。 そうなると私という存在は 「主人公や主要人物達とは出会いも知り合いもしない、単に同じ世界に存在してるというだけの通りすがりのモブキャラ」 という事になる筈。 そんな立ち位置の人間が 「この世界がどんなシナリオで進む世界なのか」 を気にしても仕方ない。 たとえ世界が滅びの危機に瀕していたとしても… 私にできることが何も無いのなら 「私は何もせずに居て良いんだ!」 と思う事にする…。 ****************** ペトロネラとして生きてきたこれまでの記憶内の情報から推測するに。 国立学園が 「下級貴族の子女や富裕平民の子女らにとっての婚活のための社交場」 ならば 王立学園もまた 「上級貴族や王家の子女らにとっての婚活のための社交場」 なのだと思う。 ただまぁ、実質的にこの社会の恋愛結婚率は低いらしい。 学園在籍中での恋愛が恋愛結婚に結びつくという事もないし そもそも恋愛自体が簡単には起こらない。 そもそも大半は親同士が子供の結婚相手を物色するための 「顔見せ、情報収集の場」 だというのが実情なのかも知れない。 何せ学園の人間関係は各派閥ごとに分かれるものらしいから。 ローゼンシュティール伯爵家が健在だった頃にはーー ローゼンハイム家はローゼンシュティール伯爵家の寄り親であるレーゼル公爵派閥に含まれていたが… ローゼンシュティール伯爵家が没落した後は派閥無所属となっている。 ローゼンシュティール伯爵家を陥れたアンチ派閥であるブライトナー公爵派閥に唆されるがままにローゼンシュティール伯爵家に不利な証言・不利な動きをし続けた分家の家々。 その内の一つであるローゼンハイム家は、本家を陥れる際に協力したブライトナー公爵派閥に入れてもらえる筈もなく… レーゼル公爵派閥が許してくれる筈もなく… 散り散りになりながら貴族社会に寄生しぶら下がっているのだ。 世襲もできない爵位を一代限りで手に入れたからといって、有力なコネがある訳でもなし。 何より「本家を裏切った分家」という邪まなイメージは絶対に消えてくれない…。 私の姉達も学園では派閥ごとに分かれてる人間関係の中で孤立を余儀なくされていたようだ。 両親は「器量が良いのだから」と姉達を着飾らせて学園へ送り込んでいたが、当然ながら貴族社会は裏切りで爵位を得たにわか貴族など相手にしない。 姉達は商家の平民としか友達になれず それでいて友人の兄だの従兄弟だのと縁付いて婚約・結婚した。 平民ながらカネは有るので 「まぁ、そんなもんだろう…」 と両親も納得するには納得した訳だが それでいて 「娘にカネをかけて良い所に縁付けさせようとしても、玉の輿のような高望みは叶わない」 と学習した。 勝手に期待して 勝手に落胆した。 その皺寄せのように両親は私には一切カネをかけてきていない…。 子供に愛情を注ぎカネをかける。 それはある意味で「投資」だ。 子供がカネを稼げるようになるなり 子供が金持ちに見そめられて金回りが良くなれば それまで注いだ愛情やカネが何倍にもなって返ってくる。 だからこそ 返報性が期待できそうな子供には愛情とカネを注ぐし 返報性が期待できなさそうな子供には愛情もカネも注がない。 人間の感情は欲に根差した損得勘定で成り立っている。 「愛情が欲しい」 だなどと甘えた考えを持てば必ず絶望させられる事になる。 しかもそれだけには留まらない。 人間は 「大切に扱われているものを大切に扱い、粗末に扱われているものを粗末に扱う」 という周りに倣え的な模倣対応を処世術に使う者も多い。 親から愛情もカネも投資されずに粗末に扱われて育った子供は どこに行っても愛情もカネも投資されない。 どこに行っても八つ当たり用の肉人形のように扱われる。 という目に遭う確率が高い。 このまま学園に入学してもボッチ確定のみならずイジメ地獄が待ってるのかも知れない…。 『荷造り』などの荷物の準備などをのうのうとやってる暇はない。 私がするべきは自分自身のステータスアップ。 自分自身の有能化・強化だ。(多分) この世界のステータス項目には 形而上経験値とか形而下経験値とかいう見慣れない項目がある。 自分自身のステータス画面に対して鑑定できるなら形而上経験値とか形而下経験値とかの意味も分かるだろうし、高数値のこれらの活用法も見つかるだろうと思う。 まぁ普通に考えて15年も生きてきた人間がーー 等級ーーつまりレベルーーが「1」というのも 「あり得ないんじゃないか?」 と思うのだ。 …だがステータス画面はその数値を叩き出している。 そこから推測するにーー 経験値を使用してスキルを習得するとか 経験値を使用してレベルを上げるとか そういう経験値の有益利用は 「誰にでも自動的に公平に起こるという訳ではない」 のかも知れないと思う。 例えばーー これが御都合主義的なマンガの世界なら 「苦痛な体験をしただけで苦痛耐性・状態異常耐性などのスキルが得られる(!)」。 だが地球世界を始めとする非御都合主義世界では 「苦痛な体験をしただけでは苦痛耐性・状態異常耐性などのスキルは得られない」 のが普通だ。 有益な特性を得るには 苦痛な体験をするだけでなく 別に何かの要素が必要なのだ。 それこそ苦痛な体験をしている相手に対して善意の第三者が 「『頑張れ!』と激励を内心で注ぐ」 などといった親和性の高い外部要素があって 「善意の人間に宿っているスキルの種子が激励された側へ分配される」 といった具合に。 或いは善意を受けた側が善意を感じた事で 「生きる気力が増幅してレベルアップに繋がる」 といった具合に。 そんな風に 「外部要素側との親和性がスキル取得やレベルアップと関連してる」 ような仕様だったのなら… 「15年も生きててレベル1でスキル無しの自分の状態」 が腑に落ちるのである。 (…どんなもんなんだろうね…) そういった仕様事情があったのだとして 鑑定でそれを暴いて活用していけるのか かなり未知数ではあるがーー 試してみる分はタダだ。 (…自分自身のステータス画面を鑑定してみるか…) 私には「試さない」という選択肢はなかった。 「現在状態顕現(ステータスオープン)鑑定(アプレイザル)!」 そう唱えて見慣れない形而上経験値と形而下経験値の項目を鑑定すると… 形而上経験値…不確定の暫定的経験値。確定条件が満たされた分が形而下経験値となる。 形而下経験値…確定経験値。変換条件が満たされればスキル取得やステータス値のプラス、レベルアップに使用できる。 と出た。 私の推測したように 「自動的に公平に経験値が有効利用される仕様ではない」 という事なのだろう。 「確定条件」「変換条件」というものがある。 (…こういう所はリアルの地球世界と全く同じなんだな…) と、ウンザリしそうになる。 ゲームだと何かしてれば経験値が貯まるし貯まった経験値で自動でスキル取得やレベルアップが起こるのに… 地球世界のリアルの生活ではそういう事は起きなかった。 リアルの場合は確実に 「他者からの好意」 などといった外部要素がスキル取得やレベルアップと関連していた。 地球世界では無能者は 「誰からも愛されなかった」か 「誰にも感謝しなかった」か いずれかの状態固定があって 経験値活用要素を得られなかったように思えるのだが… それはこの世界でも同様なのかも知れない…。 愛されない者にとって どこまでも不条理で残酷な世界ーー。
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