「現象創造権優勢による事象改竄」という魔法

1/1
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/87ページ

「現象創造権優勢による事象改竄」という魔法

f3cb3bf0-232a-4a14-961c-de4658959702 万能薬(アルハイルミッテル)の研究は頑張ってちゃんとできた。 その過程で分かった事ではあるが… おそらく、この世界の物質の作用は 「地球世界ほど固定化が進んでいない」。 化学反応が物理的法則として確立されていない状態ーー。 「魔法」 という空間相対性仕様を適用している世界だと 「必然的に物理法則も固定化しきれない」 という事なのだろう。 つまりは 「薬草の薬効成分も変化し得る」 「毒草の毒成分も変化し得る」。 地球も中世期には毒草が積極的に薬草として利用されている。 芸香(ルー)などは地球でもこの世界でも毒草だけど 中世期の地球でもこの世界でも薬草として多用される。 「毒成分を抑圧・圧殺して薬効成分を最大限に引き出す」 必要があり、そうした処理が可能な植物だということだ。 だが、そうした有用性の活性化処理は 「人が人を使う」 際にも必要なものだと思う。 成分ーーエレメントに対する調伏と刷り込み使役。 そうした道理の必要性をよくよく理解して薬を作るならーー 「入手困難な素材の代わりに入手可能な代替物でも充分な効果が出せる」 のである。 錬金術を行う上で最も大切な事は、それこそ 「誰にでも再現可能な科学とは真逆で、『自分だからこそ』作用を引き出せる」 という点にある。 「自分の影響下で、自分自身の身に起きた変化・反応を、影響下の物へと振りかけ、反抗的反応を封じ、調伏を行い、自在に活用する」 という事こそが錬金術の肝である。 自分自身という魂が経た通過儀礼と それによって起きた自分自身の変化。 「苛烈な体験をして後、健全さを取り戻す」 という 「揺れ幅の大きい日常に対する揺さぶりと日常への回帰」…。 そうした健全さの修復を外部に依存せず 「独力で為す」 事が錬金術師が錬金術師たる所以となるのだそうだ。 つまりーー 窮地に陥って 誰も助けてくれず 見捨てられ 切り捨てられる。 そうした体験の中 「恨みを賠償要求意識へは換金せず、自分自身の自律的調和を望む」 という方向へ向かった者達がーー 錬金術という領域へ足を踏み入れる新規参入者(ニオファイト)たり得るのだという事。 そうした変化は 治癒魔法を使えるかどうかにも反映する。 根本的に治癒魔法は 「自分自身を健全な状態へ自己回復させる必要性」 の 「外部発露」 なのだという。 そして元々、万能薬(アルハイルミッテル)の材料は 「治癒魔法を付与しやすく、付与された治癒魔法が魔力を引き出されなくても、人体と接する事で治癒魔法の発動が誘発される」 ようなものが集められていた。 万能薬(アルハイルミッテル)は 「材料の物質が持つ癒し効果を最大限に上げる」 ような類のものではなく 「治癒魔法を引き出せない患者に魔法使い抜きで治癒魔法をかける」 というコンセプトで作られていたのだ。 そうーー 万能薬(アルハイルミッテル)とはーー 治癒魔法使いが 「自分の居ない場所でも魔力無しの人達でも治癒魔法が使えるように」 という善意で生み出したのがその正体なのである。 なので、それに従って作った。 私の「ノーマライズ」の良いところは 「原本を解体・分解して複数に分ければ、分割した分の数だけ元通りの物が出来る」 という増殖機能だと思う。 万能薬(アルハイルミッテル)をたった一つ作れば、それを次々増やしていける。 (魔力が続く限り) 「有限の初期費用で無限の儲けを産める」 スゴイ魔法だと思う。 魔法というものは 「場」 という条件が結構大きくものをいう。 私自身が患者の目の前に居て患者を癒す場合 必然的に患者の場と私の場が重なり 患者は弱ってるので必然的に私の場が患者の場を圧倒して ちょっとした淘汰状態になる。 治癒魔法使いは、そうした場の優勢を悪用しないから治癒魔法使いであれる。 一方で薬に治癒魔法を込めても、私のいない所で、私の魔力をすら感じ取れない魔力を持たぬ人達が患者だと「場の現象創造権優勢による事象改竄」という魔法の根本原理である「場の現象創造権優勢」が満たされない。 現象創造権優勢が満たされなければ 魔法効果は十全な発揮がなされない。 こうした効果は実は様々な薬物に関しても言い得る事である。 薬学に対するリスペクト感情 薬剤師に対するリスペクト感情 そういったものが患者側にカケラも無いと効果が得られ難くなる。 私の場合は特に鑑定の重複起動を元に得た知識の活用で万能薬(アルハイルミッテル)を作るのだから… 「既存の知的権威に従って、そこから免状的な認可を得た」 とかでも無いため 知的権威追従主義者からはリスペクト感情は得られにくいと思う。 ただ、魔力を自分で魔石から引き出して魔石に付与された魔法を使う人達だと… 「魔石に魔法を付与する事自体のハードルの高さが如実に実感できる」 ので付与スキルを持つ魔法使いをバカにしたりしないし 実力主義的リスペクトは必然的に出てくるのだけど… 庶民は魔力がない 魔力があっても魔法適性が0 魔力を感じられない 魔法使いをリスペクトできない。 ゆえに 「私が作った」 とバレると絶対効かなくなる気がする…。 なので人々に万能薬(アルハイルミッテル)を使わせる時の触れ込みとしては 「過去の錬金術師が作った万能薬(アルハイルミッテル)を現代の複製魔法使いが大量複製した」 という名目が用意される事になっている。 効く効かないは各個人次第。 私はとりあえず一つ万能薬(アルハイルミッテル)を作って 幾つか複製してみて、検証と改良を繰り返して仕上げたいと思ってる。 ****************** 妊婦なのであまり根を詰めて働きたいとは思わない。 胎教というのは大事な「無意識への刷り込み」だと思うのだ。 余裕のない心で妊娠期間を過ごすと 「産まれる子供も盲目的不安感がプリインストールされた状態で生まれて来る」 のだと思う。 そういう意味では 前世の私は幸運だった。 結婚せず 子供を作らなかった。 もしも、あんな状態で結婚して子供を作ってたらと思うとーー そこには悲劇しか無かったと思う。 小動物がストレスの多い環境で出産すると産まれた我が子を殺す子殺しが普通に起こる訳だけど。 それは 「生き延びさせてやれない」 という事を理解しているが故の 「種の集合意識保護を目的とした」 作用なのかも知れないと思う。 虐待されながら延々生き延びると 意識が倒錯性と恨みで汚染され 魂が汚れる。 二度と元の健全な状態へは戻れない。 動物は特に。 だからこそ動物は 「意識が汚染され魂すら汚れる」 事になる被虐環境しか無いと思えば生き物は子供を産まないし 産んでも物心着く前に殺してしまう。 動物は猿人間達と違って自分達の魂の次元の限界を理解出来てる。 猿人間達は窮地に陥った場合 「恨みを賠償要求意識へ換金する」 という方向へ進んで自ら魂を汚れへと堕とす。 それでいて自分達がそういった道へと堕ちてる事実にすら気付かず 「現実創造の舵取り」 という聖域に侵入し、世界を壊しながら自分達の増殖・増長を繰り返す。 ああいう存在ののさばる社会で妊娠・子育て期間を過ごすのは地獄でしかない。 だから、あの世界にも良心のカケラがあって 私は前世で結婚もせず出産もせずにいられたのだと思う…。 「産めば地獄しか無い世界では産めず、産んでも大丈夫な世界では産める」 そういった空間に適した生き方・在り方が許容されるのは 「誰かがそう望んでくれた」 からなのかも知れないと思うのだ…。 それこそ法の根本にある善意ーー。 「自分達が味わった地獄を後の者達にまで味わわせたくはない」 という善意。 「地獄を味わう世代は自分達の代で打ち止めにする」 と決めた人達が居て そこで 「存在性の空間適正化」 が認められたのだと思う。 日本において 「被差別部落」 と位置付けられた集落は 心中史によると 「共に死ぬつもりで相手だけ死なせた」 ような過失殺人者などが押し込められた刑務所代わりの土地だったらしい。 一思いに処刑するのも忍びないが それでも何食わぬ顔で社会に受け入れる事もできない 情状酌量の余地の認められた犯罪者達ーー。 そういった人達が何故、刑務所に該当する場所でつがい、子孫を残してしまったのか…。 それはそれで気になる所ではある。 「自分達が味わった被虐地獄を後の者達にまで味わわせたくはない」 と地獄の打ち止めを願ったなら、そこで子孫を残すような事は控えただろうに…。 時代がくだりーー 敗戦を機に 被差別部落が元々は刑務所代わりだった事実さえ 歴史認識改悪で歪曲され 「施政者達が大衆の不満の吐口として『嗜虐用肉的(しぎゃくようにくまと)』として意図的に被差別部落を作ったのだ」 などと大嘘が広められ…それを信じる人達で溢れ… 人々の霊性も容易く堕落したのだろう。 日本という国の霊性の堕落にはーー そういった 「逆恨みを賠償要求意識へは換金する事を選んだ者達の悪念」 が関係していた。 真実が隠されて歪曲される。 たったそのくらいの誤差で 人間という生き物の魂は 世界を蝕み尽くす猿人間の領域へと堕ちてしまえる…。 私はあの世界で子供を産まず 縁も薄く あの世界を思い切り良く見捨て逃げ出す事が出来て良かった…。 だけどーー そういった避難が 「沈没する巨大船から救命ボートに乗せられた」 ようなものだとするなら… 「誰かが自分自身を後回しにして数に限りある救命ボートに乗せてくれた」 のだ…。 (…繋がっていけなかった。…愛せなかった。…でも、「愛したかった」…) そう思いながら… 私はそっと自分のお腹を撫でた…。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!