間話:ゲラルト・ブライテンバッハの独白

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間話:ゲラルト・ブライテンバッハの独白

0e4b12c3-8414-491b-97e9-c21009b4f98b 騎士団の方では人員が足りてないらしく、入団して間もない見習いまで戦線に投入している。 エッカルトとベルノルトもその例に漏れない。 有事に備えて、これでもかと言わんばかりに防御魔法と治癒魔法の込められた魔石を持たせているので簡単にくたばる事は無いとは思うが…不安はある。 当人達も 「ああ…。ペティーの◯◯◯◯にブチュブチュ◯◯◯ブッ刺してアンアン言わせてドップリ中出ししときたかった…。このまま死ぬのは嫌だ」 「◯◯吸ってオッパイたらふく飲ませてもらいたかった。◯◯◯舐め舐めの御奉仕してもらいたかった」 とか… 何気に下品極まる願望剥き出しの本音を人目も憚らずに口にして周りをドン退きさせている…。 だが人間、本気で 「死ぬかも」 とか思うと 「後悔しないように」 という事を一番に考えてしまう。 まぁ、気持ちは分かる。 俺も毒を盛られた時に同じように思った…。 心では 「ペトロネラが幸せなのが一番だ」 と本心から思えるものの 死と向き合った時のポンコツ状態の体は 欲望果たせぬ肉色の無念に駆られ、股間だけが元気だった…。 解毒魔法の込められた魔石もちゃんと持ってたから死なずに済んだが… マジでな。 命のリスクがある事を実感すると 人間ついつい欲を重視してしまう。 刹那主義的に傍若無人に生きれば良かった… と後悔しそうになる。 それでいてーー (だからこそ傍若無人になってはいけないんだろうなぁ…) とも思った。 「お行儀良く社会的に振る舞う日常」 というものを最期の最期まで遵守する事が 「お行儀良く社会的に振る舞う日常が『今後も続くように』」 という一種のマジナイのようなものだと痛感したのだ。 逆に 「どうせ死ぬんだから好き放題にしてやる」 という刹那主義的傍若無人は それ自体が 「死相を引き寄せる」 マジナイのようなもの。 「相手の気持ちを思いやる」 という心情は 「今日も明日も明後日もずっと日常が続いていく」 という環境の無難さを前提とした心情だ。 対人関係が選択と交渉の連続であり 一度嫌われれば好かれるのが難しく 一度信頼を裏切れば再び信頼されるのが難しいと 挽回の困難さを知っているからこそ 「相手の気持ちを思いやる」 必要性を悟るのだ。 相手の気持ちを無視した強姦とか、やろうと思えばいつでも出来た。 でもそれをしなかったし、今後もしない。 「愛すべき日常がずっと続くように」 という 「刹那主義を廃した恒常性至上主義」 を俺達は支持するからだ。 「惚れた女が笑顔で暮らせる日常が今後も続くように」 と望み、自分自身も命を繋いでいく。 日常の一コマとして自分自身のお行儀の良い社会的振る舞いを刻んで、女の目から見た社会の要素の一つとして、その心に留まる。 平穏な日常を愛する。 たったそれだけなんだが… たったそれだけの事が俺にとっては重要だ。 …ペトロネラは気付いていないようだが (というか、ペトロネラだけが気付いていないようだが) ヒルデブレヒトは前世で彼女を捨てて地獄を味わせたクズ男当人だ。 そのくせ 「ペティーは俺が護る!」 とか言っているので 「「「うわぁ〜。何、このキチガイ…。どういう思考回路したらそういう発想になるんだ…?死ねよ…」」」 と俺達は心底からヒルデブレヒトの精神異常ぶりに震撼した…。 ラインハルトも事情を知って、それ以降念入りにヒルデブレヒトに張り付いている。 勿論、ラインハルト自身が覗き魔の変態の性欲魔人みたいな男なので、ペトロネラに対しても隙あらば手を出そうとするだろうが… ヒルデブレヒトのような精神異常者にペトロネラが誑かされるよりはマシだろう。 普通に考えてみても分かると思うのだがーー ペトロネラからすれば 自分を地獄に叩き落としたクズ男など 「未来永劫二度と遭遇したくない」 筈だ。 なのに 「ペティーは俺が護る!」 とか本気で言って粘着ストーキングしてるキチガイがヒルデブレヒトだ。 「「「「(ヒルデブレヒトのような精神異常者から)ペティーは俺が護る!」」」」 と俺、ラインハルト、エッカルト、ベルノルトが本気で決意したのは必然だった…。 あと、叔父上も叔父上で色々問題ある男だ。 ペトロネラの近くにいる男といえば 愛妻家の既婚者 男色家 枯れた老人 奴隷契約で行動制限された奴隷 の四種類のみ。 「若い嫁をもらった中年男が嫁に『目移りする自由を与えない』ために周囲の人間の種類をも操作する」 という事はありがちではあるが。 「うわぁ…。そうまでして囲い込みたいのかよ。…そんなに自分に自信がないの?」 とドン退きはする。 ペトロネラは多分 「男という生き物のゲスさ」 を余りよく分かってない。 そのせいでヒルデブレヒトや叔父上の異常さをも認識できないのだろうと思う。 ラインハルトに言わせるとペトロネラが叔父上に向ける愛情は 「あんなのは恋愛感情じゃない!」 らしい。 「小さい女の子が父親の庇護下に満足しきって『パパのお嫁さんになる』とか言い出すのと同じ、父性的庇護欲求だ。 父性的庇護に飢えた傷付いた女性が社会不信と向き合わず対人恐怖症に陥るのを避けるためにハマる偽の愛着だ。 彼女は精神的に癒されてないから同世代の男よりも父親世代のオッサンに惹かれるという病的状態に陥っている!」 そう断言されてしまえば 「なるほど」 と納得させられた。 「精神的に癒される時が来たら、父親世代のオッサンではなく、ちゃんと同世代の男に魅力を感じてくれるようになる筈だ」 という理論を俺も支持するしかない。 だがそれはーー 「ずっと癒されないままだったら、ずっと『オッサンが良い』ままなんじゃないのか?」 という不安が残る理論でもあったーー。
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