ガラスの靴

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         1 ユキナ「あんたバカじゃないの!? もう!」 ミナミ「ごめん。でも本当にダメです。動けません」  秋の学園祭の演劇部の講演。『シンデレラ』の舞台の幕が間もなく開こうとしていたとき、シンデレラ役のミナミは突然の腹痛に襲われた。 大橋「もう時間がない。代役を立てるか」 白鳥「間に合わないわ。時間をずらしてもらったらいいんじゃない」 ヒロシ「白鳥副部長。それは難しいです。このあと軽音が入ってるし、舞台セットを撤去してまた組み直すのは不可能ですよ」 白鳥「じゃあ私がシンデレラをやるわ」 コージ「お言葉ですが副部長。副部長の足のサイズですと、肝心のガラスの靴が合いませんよ。一番肝心なところです。ぴたっとこなきゃ・・・」 白鳥「プラスチック製なんだから何とかなるでしょう?」 大橋「確かにガラスの靴は重要だな。ピッタリじゃなきゃ駄目た。王子がシンデレラを探し当てる最重要アイテムだからな。おい、ユキナ。お前の靴のサイズは?」 ユキナ「えーっ?! 私ですか!? 私、ぴったりですよ。実はこの前、履いてみました! でも、いいんですか!? 私がヒロインだなんて! 私、衣装もそのまま着れますしー、セリフも芝居も全部頭に入ってまーす!」 ヒロシ「バーカ! ユキナには意地悪な姉の役がお似合いなんだよ。シンデレラって柄じゃない」 ユキナ「なんてこと言うの!」 ミナミ「ごめんなさい。みんな・・・」    ミナミはしゃがみこんで額に汗をかいていた。 ユキナ「ヒカル君。あんた、全く監督不行き届きよ。君の彼女でしょ? どうしてこんな時に」 ヒカル「すいません。でも、ついさっきまでいつも通りに元気だったのに」 ユキナ「新人のくせに主役(ヒロイン)なんか取ってさ。だいたい、ヒカル君だって、ミナミが指名しなければ王子役なんて取れなかったでしょうに。本当は大橋部長が王子役だったんだから・・・!」 コージ「もう時間がありません。どうします、大橋部長・・・ユキナでいきますか?」 【間もなく、演劇部による舞台『シンデレラ』の講演が始まります。皆さん、講堂へお集まりください】  学際の司会が、演劇の開始を放送した。 大橋「シンデレラ役は白鳥副部長でいく。魔法使い役はヒスイで」 ヒスイ「はい」 白鳥「わかりました」 「ちょっと待ってください」  一人の女子が、舞台裏に入ってきて言った。 「シンデレラの役、私にやらせてください」 ユキナ「あんた誰? 見たことないね。何年生? そもそも部員以外は入って来ちゃだめよ」 「ガラスの靴は私にぴったりなの。セリフも覚えてる。動きも覚えてる。もう時間がない。私にやらせてよ」 白鳥「あなた・・・?!」 「レイ。 ナナミ レイよ」  大橋部長と白鳥副部長はお互いの顔を見合わせたあと、レイを見つめた。 大橋「レイ。やってみるか」 ユキナ「えーっ!? 何で―!?」 白鳥「レイ、早く着替えて」        『ガラスの靴』
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