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エピローグ
回ってきた決裁書に目を通していると、「あ、それ」と通りがかった後輩が声を上げた。視線を向けると、こそりと話しかけてくる。
「桧山さんめっちゃビビってたらしいですよ」
「へ?」
面白がっていることが透けたそれに、離れたところで主任と話をしていた桧山の様子を思わず暎は確認した。そうしてから、後輩に向き直る。
「ふだんにこにこしてる堂野さんが怒ったから、茶化しすぎたかもしらんって」
「……それ、反省したでええんやない?」
ビビらせた覚えはいっさいないし、そもそもとして怒った覚えもないのだが。
「でも、このあいだの夏休も、桧山さんが主任に言ってたんですよ。休まんから苛々するんやいうて訴えてはりましたけど。あの強引さすごいですよね」
「あぁ」
なにが「でも」なんやろなぁ、と思いつつ、苦笑いで相槌を打つ。結託していたということらしいが、気を使ってもらったのだと思うほかない。
思惑はどうあれ、そのおかげで、春海と向き合う時間を取ることができたのだろうし。
「まぁ、でも、苛々しとったわけではほんまにないけど、リフレッシュにはなったで。ありがたい思っとくわ」
「そうしてあげてください。それで、たまには、素のところも出してあげないと」
また休み取らされますよ、と笑った彼女が、あ、とカウンターに向かっていく。窓口で応対を始めた後ろ姿を見とめて、暎は手元の決裁書へ視線を戻した。
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