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「まぁ、……せやな」
「今日もわざわざ見送りに来てくれたし。あのまま梨花ちゃんのとこに泊まるんやろ? あいかわらず仲良しやねぇ」
「まぁ」
「そんな嫌そうな声出さんでも。帰ってきたら、あき兄ちゃんもヤケ酒付き合って~って言うてたやん。……あれ、そういや、あの子、まだ二十歳になってないんやなかった?」
「ヤケ酒言うてるだけで、ジュースとお菓子しか入っとらんで、あの袋」
たしかに、パンパンに膨らんだコンビニのビニール袋を抱えていたけれど。根負けしておざなりな相槌をやめた暎に、春海が笑った。
「気にしぃやねぇ、あきちゃんは」
自分が気にしすぎているという問題なのだろうか、これは。黙ったまま深く座り直す。
「だって、あきちゃんが気にしとるん、『めっちゃ嫌な態度取ってもうてんけど』って言ってたことのほうやろ。せやったら、もうしゃあないやん」
「そら、まぁ、……そうやけど」
「まぁ、でも、俺はちゃんと断ったよ」
「は?」
予想していなかった台詞に、暎は身体ごと振り向いた。その勢いにか、春海は苦笑いを浮かべている。
「なんなん、その反応。せやなかったら、なんのヤケ酒なんよ。あぁ、ジュースなんやったっけ? まぁ、なんでもええけど」
「……おまえが帰るから?」
「ちゃいます。ちゃんと時間取ったん。はっきり言えんままバイバイいうんもきついやろなぁ思ったから。七海ちゃんが話したいって言うてくれてたんは、ほら、あきちゃんから聞いとったし」
「…………」
「ん? あぁ、あきちゃんのことはなんも言うてへんよ」
大丈夫とばかりにほほえまれて、暎は頭を振った。そういう問題ではない。
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