天狐様

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 「はい!みなさーん、こんばんは。さやでーす。今日も生配信やってくから最後まで見てねん……あ、でも今日は特別ゲストがいるのでまずはその子を紹介するね!」  私はカメラの外でスタンバイしていた天狐様に合図を送る。  「な、なぁ、さやぁ、ほ、本当にこれやるのか?わらわなんだか恥ずかしいのだ」  「なに言ってるの信者増やすなら、これが一番手っ取り早から!さ、ほらこっち来て!そんな姿の天狐様みたらみんなメロメロのイチコロでフォロワーばく上がりだから」  そう。今目の前には下界に下りてきた天狐様が巫服に着替えて待機しているのだ。けもみみ美少女に巫服という神マッチ。視聴者は間違いなくコスプレイヤーと勘違いすると思う。でもそんなの関係ない。天狐様の巫服姿のパワーはそれだけ凄まじいのだ。間違いない。きっとロリオタの心をぎゅんと掴んで離さない。そうした視聴者は間違いなく熱狂的信者になる。  天狐様はもじもじと、俯きながらも何とかカメラの前まで出てくる。すると私の方をチラチラ見ながらゴニョゴニョと何か訴えている。私はあえて聞こえないふりをして自己紹介をするように促す。  天狐様は観念したのか、声を出さず『あ、と、で、お、ぼ、え、て、お、け』と、言うとゆっくりと深呼吸をしてからカメラに向き直ると、ゲンコツを二つ作り胸の前で構える。そして──。  「は、はじめましてなのだ……コン。わ、わらわのな、なまえは、コ、コンコンなのだ……コン。見ての通り妖狐なのだ……コン。みなチャンネル登録、フォローよろしくなのだ……コン」  その瞬間天狐様の身体が七色に輝き力が膨れ上がるのを感じた。天狐様も驚いている。  コメント欄を確認すると……。  『神降臨』  『けもみみに巫とか神かよ』  エトセトラ、エトセトラ  コメント欄はそんな称賛の声と共に信者になります宣言の嵐だった。こうして無事天狐様は力を取り戻すのだった。    
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