あのね、お願いがあるの

あのね、お願いがあるの。
そろそろまた抱いて欲しいの。

びっくりした？
あはは、そうよね、あの子が部活に行きだしてから、また2人きりの時間が持てたとたんにこんな話だものね。

…違うわよ。
誤解しないで聞いて。
あの子が生まれてからのレスを責めてるわけじゃないわ。
お互いさまだったし。

仕事が忙しくて、あまり休みが無いことは少し淋しかったけど、レスが淋しかったわけじゃないわ。
あなたの体が心配なだけで。

他で浮気してるとかも疑ったこともないよ。
私を女として見れなくなったのかなとかも考えたこと無かった。
いつも大切にしてくれるし、愛されてるのわかってるよ。
そうでしょ？
レスでも幸せだったの。

ただ、恋人から家族になってしまったな…っていうのが嬉しくもあり、淋しくもあるけれど。

6月の誕生日でだいたい人生の折り返しになるわ。

怖いの。
老いるのが。
老けるのが。

幸せに年を積み重ねてきた自信はあるし、これからもそうだと思うけど、最近急に怖くなってきたの。

気持ちの方はね、自分次第だと思ってる。
自分の努力で勉強して新しいことも吸収できる。
物忘れをするようになったけど、忘れる以上に勉強するわ。

でも体は逆らえない。

好きだった洋服が似合わなくなってきた。
体力が無くなってきた。
白髪がチラホラしてきた。
付き合う時にあなたが可愛いと言ってくれた目も、そのうち皺に囲まれる。

あはは。
絶対にあなたならエステ行きなよって言うと思ってた。
エステも興味はあるけど…なんかね、そーゆーことじゃなくて…。

年齢が追いかけてきて、そして追い詰めてくるの。
苦しくてたまらない。
本当に怖くてたまらない。
エステに行ったとしても、でもやっぱり老いるのよ。

だからね。

もちろん毎日じゃなくていい、1ヶ月に1回でも。
そうだ、誕生日ごとでもいいわ。
恋人みたいに東京タワーの見えるホテルに行って、裸の私を抱きしめて、撫でて、『今日も綺麗だね』って言って欲しい。
行為そのものは無くてもいいの。

これから老いていく私をあなただけはいつまでも『綺麗だね』って言って欲しい。
皺くちゃになっても、それでも私の裸を抱きしめて『綺麗だね』って言って欲しい。

うふふ。
今さら照れくさかったら、ニコニコしながら抱きしめて、撫でてくれるだけでもいいわ。
それでも私には十分わかるから。

あなたがそうしてくれたら、これからの私の人生は無敵になるわ。
全く怖くなくなるかはわからないけど、あなたがいれば大丈夫。