1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
強奪のDNA
お婆さんが川で洗濯をしていると、大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこ、と流れてきた。
家へ持って帰り割ってみると、中から玉のような男の子。
お婆さんは腰を抜かした。
「おやまあ。桃太郎のときとそっくりだねえ」
お爺さんもたまげる。
「この子は桃太郎の息子にちがいない。桃次郎と名付けよう」
鬼退治に行った桃太郎は、その後女を作り、お爺さんとお婆さんの元から去っていった。
二人は思った。あの女との子だと。
桃次郎はすくすくと成長した。
大きくなったある日、桃次郎は二人に告げた。
「お爺さんお婆さん。僕はこれから、鬼ヶ島に渡って鬼退治をしてきます」
お爺さんが言った。
「桃次郎。それはおまえのお父さんがもうすでにやったことだ」
お婆さんも言った。
「おまえのお父さん、桃太郎は、宝をたくさん持ち帰り、私たちにも分け与えてくれたんだよ」
「なに?」桃次郎の眼が光った。「では、宝の一部はこの家に?」
お爺さんは頷く。
「そうだよ。一部といっても相当な量がある」
お婆さんは微笑んだ。
「おかげでわしら、楽して暮らせておるんじゃ」
「そうか」桃次郎はぺっぺっと手につばを吐きかけた。「この家にも宝があるのか。それじゃあーー」
桃次郎は刀を抜いた。
「手始めにまずおまえらをぶっ殺すか」
最初のコメントを投稿しよう!