違和感と炭酸

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違和感と炭酸

 コーラのグラスに指で描いたニコちゃんマークは、目尻からダラダラと涙を流してカウンターの天板に置かれたコースターを濡らした。それを眺めていると、不思議と笑いが込み上げて来た。 「千隼(ちはや)、お前どうした?」  蒼太(そうた)がテーブル席で頬杖をつきながらこちらを見ている。 「いや、ようわからん。なんか違和感というか……おかしいような気がするんやけどなぁ〜」 「何がそんなにおかしんや?別に朝倉はなんも変わっとらんと思うけど」  蒼太はコーラを飲み干すと、グラスを揺すって氷をカランと鳴らした。グラスを置くと、結露で濡れた指で、頬の横辺りまで伸びた髪の毛を摘んでねじっている。  回りくどい言い方をやめると、全く興味がなさそうだ。 「ん〜。お前が何も思わんなら、俺の勘違いかもなぁ…」  ため息をついて、自分もコーラを一口飲んだ。  父が亡くなって引き継いだ喫茶店。  毎日のように来る蒼太以外は、たまにしか客が来ない。  コーラを飲みながらカウンターに肘をついて接客しているのは今だけで、他のお客さんが来たら急いでシャンとする、そういうスタイルで経営している。 0037c28c-93a4-47a8-8a1f-da1e1866b19f
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