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朝倉陽茉莉は俺と蒼太の幼馴染だ。親同士仲が良く、ずっとそばにいて従兄弟のような距離感で育って来た。
だが、陽茉莉が仕事の研修でヒノ島に行き、秋冬を過ごし、無事に帰って来た。
それからしばらく経ったのだが、何となく違和感が続いている。
人に言えば「お互い照れてる」なんて言われそうだが、これは照れとか気まずさとかそういうのではない。
何もおかしくないのに居心地が悪いのだ。
言葉を選ばずに言えば彼女に「気味の悪さ」のようなものを感じている。
しかし、同じ幼馴染の蒼太が気付かないのなら、やはり俺がおかしいのか。一緒にヒノ島で研修を受けた京佳にも昨日聞いたが、やはり変わりはないとのことだった。もちろんヒノ島でも特に何も無かったということだった。
そうなるとやはり……。
気付かないうちに何かやらかして、嫌われたか、怒らせたか、そういうことなのだろうか?陽茉莉は昔から怒ると口数が減る。そこから更にキレると、一切の遠慮をせずに一気に捲し立てる。なんだかんだで普段から口が回る方だし、喧嘩になるとなかなか勝てない。こちらが完全に正しいという自信があっても、勝てたためしがない。
「いい加減にしいまい!」
握り拳を振りかぶって彼女が怒ると、ごめんの三文字も待たずにもう殴られているのだ。
元々恐ろしい奴だったかもしれない。
しかし、よく考えてみても彼女を怒らせるような心当たりがない。
いや、気付いていないこと自体に怒っているということもよくあるのでそれもまた恐ろしい。
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