16人が本棚に入れています
本棚に追加
「いきなり来んと、電話くれたらすっと出られたのに」
陽茉莉がスニーカーのつま先をアスファルトでトントンと整えながら口を尖らせ、ポケットから髪ゴムを取り出し、背中まである栗色の髪を後ろでひとつに束ねた。
「ごめん」
「あ、いや、別に良いんやけど。まあ、でもお父さんが出てこなくてよかったねえ」
お母さん似のわざとらしい笑い方でおどけて見せた。
ここまで陽茉莉が怒ってる様子は全くない。息を吐き出すと同時に、安堵して少し胸が軽くなる。
殴られなくて済みそうだ。
しかし、なぜだろうか?
ほんの少しではあるが、正体不明の違和感が消えていない。気のせいだという可能性が高いが、怒らせてもいけないのでしばらく気をつけておくことにする。
最初のコメントを投稿しよう!