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「結衣は全く泣き虫だな〜」 お父さんは、ニコニコと笑いながら立っている。 「だって…だって…せっかく、お父さんに会えたのに…酷いこと言っちゃって…」 お父さんは、音もなくスーッと近寄ると私の頭を撫でる素振りをした。 「親子喧嘩ができて、お父さん嬉しかったぞ。何せ初めて経験だったからな」 「お父さん…」 お父さんは、頷くと弦太を見た。 「弦太君。ご覧の通り私は幽霊だ。驚いただろ?」 弦太は目を見開いたまま、勢いよく頭を左右にブンブンと振った。 「結衣は泣き虫だし、時には我儘を言って困らせるかもしれない…でも…とても良い子なんだ。どうか…結衣を宜しくお願いします」 お父さんは、深々と頭を下げた。 「お、お父さん!頭を上げて下さい。結衣のことは大丈夫です。俺が…俺が守っていきますから」 私は驚いて、弦太見た。 お父さんに宣言をした弦太の表情は、頼もしくて優しかった。 「うんうん。弦太君ありがとう。これで、お父さんは安心して成仏できるよ」 お父さんの言葉にハッとした。 「お父さん…行っちゃうの…?」 「うん。これからは天国で結衣達を見守る事にするよ」 「そっか…」 ふと、お父さんが空を見上げ呟いた。 「あ〜そろそろ行かないといけないな…」 お父さんの目線を辿ると、空からキラキラ輝く光が降りてきている。 その光は、真っ直ぐとお父さんの足元まで伸びて来た。 「結衣…お母さんを宜しく頼むよ。それから弦太君と仲良くな」 「うん…お父さん、ありがとう」 「そんなに寂しそうな顔をするな。たま〜に遊びに来るから。その時は、もっと幽霊っぽく現れようか?」 お父さんが胸の前で、ダランと両手を下げて見せる。 いわゆる恨めしやのポーズだ。 「お父さん!やめてよ」 「アハハハハ。冗談だよ。あ!弦太君、結衣を裏切ったら呪っちゃうからね〜」 「え!呪うって…」 弦太の顔から血の気が引いていく。 「お父さん!笑えない冗談やめて!」 「アハハハハ!ごめん、ごめん。弦太君、冗談だよ。いや、ちょっと爪痕残そうかな〜なんて思ってさ」 「そんな爪痕いらない」 「結衣は厳しいな〜」 お父さんはニコニコしながら、自分の頭を掻いている。 そんな姿を見て、弦太が安心したのかホッと息をついた。 「弦太、ごめんね。ビックリしたでしょ?」 「あ〜うん。ちょっとだけ」 笑顔だったお父さんが、ふと真顔になり空を見上げた。 「うん。そろそろだ…結衣、それじゃ…元気でな。弦太君、結衣をお願いします」 お父さんが再び頭を下げ、空から降りて来ている光に片足を入れた瞬間、その体はフワリと宙に浮かんだ。 「結衣、弦太君、バイバ〜イ!!」 お父さんは、満面の笑みで光に吸い込まれるように天に昇っていった。 「結衣のお父さん…陽キャなんだな…」 「うん。お父さんは陽キャな幽霊だったよ」 私と弦太は、ソッと手を繋ぐと空をいつまでも眺めた。 嫌な思い出から、素敵な思い出に塗り替えられた道に立ちながら… おわり
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