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「結衣!おはよう!もう朝だよ〜」 部屋に響く大きな声で、私は目を覚ました。 (え?誰…?) 私は起き上がると、ボンヤリとした頭で声の主を探す。 突然、目の前にお父さんがヌッと現れた。 「キャー!!」 私は驚き、悲鳴を上げてしまった。 「お父さん!ビックリするから急に現れないで!」 私の胸は早鐘を打っている。 「そんなに驚くと思わなかったんだよ…」 シュンと肩を落とすお父さん。 何だか、ちょっと可哀想だ。 「あ〜ごめん…お父さんがいる生活に慣れてないからさ」 私が謝ると、お父さんが私の頭を撫でた(感覚はないけど) 「そうだよな…お母さんと2人で頑張ってきたんだもんな。結衣は頑張り屋さんで良い子だ」 そう言えば…お父さんは、いつも私の頭を撫でてくれた。 お父さんの手は大きくて温かったのを覚えている。 切なくて温かい複雑な感情を打ち消すように、私は頭を振るとベッドから下り、学校に行く準備を始めた。  家を出て、あの道に立つ。 私の後ろには、陽キャ幽霊のお父さんがいる。 でも、やっぱり…この道はダメだ… あの時の事がフラッシュバックする。 「結衣…お父さんがいても、やっぱりダメか?」 心配そうに、私の顔を覗き込むお父さん。 「うん。やっぱりダメみたい」 私が答えると、私を呼ぶ声が聞こえてきた。 「結衣!おはよ〜」 弦太だ。 私はホッとして振り返った。 「弦太、おはよう」 弦太と2人、肩を並べて駅に向かう。 (今日も弦太がいてくれて良かった) 心の中で感謝する。 その時、私はお父さんがいない事に気が付いた。 思わず、キョロキョロと辺りを見回す。 しかし、どこにもお父さんはいない。 「結衣、何キョロキョロしてるんだ?」 不思議そうに見つめる弦太に、慌てて笑顔で答える。 「え!ううん。何でもないよ」 「ふ〜ん…なら良いけどさ」 尚も不思議そうにしている弦太に、好きなアニメの話を振ると、目を輝かせ熱く語り始めた。 私は、頷きながら目の端でお父さんを探したが、やっぱり姿はなかった。 (まぁ…良いか。後で現れるだろうし) 私は頭からお父さんを追い出すと、弦太の熱い語りに耳を傾けた。
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