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⑤
私は、それから机に突っ伏し泣いた。
(何よ!私の気持ち、ちっとも分かってない!)
心の中で私は悪態をつく。
(お父さんのバカ!自己中!大嫌い!)
暫く泣き続けた私は、少し落ち着きを取り戻すと顔を上げた。
気付けば、部屋は真っ暗になっていた。
今日も、お母さんは夜勤。
私は溜め息をつきながら立ち上がり、電気をつける。
(そう言えば…お父さん、どこに行ったんだろう?)
私は、キョロキョロと辺りを見回した。
「お父さん…?」
呼んでみるが返答はない。
もしかして…成仏したのだろうか?
それなら、それで良い。
私の思い出の中のお父さんは、あんな感じじゃなかった。
小さかったから、あまり覚えてないけど…優しいお父さんだった。
あんなに自己中だと思わなかった。
絡みもウザいし…
「きっと、成仏したんだ」
自分を納得させるように、声に出して言い聞かせてみる。
でも、私の心はスッキリしない。
「もう!何でこんなにモヤモヤするの?」
私はモヤモヤを胸に抱えたまま、ベッドに潜り込んだ。
(今は、何も考えたくない…)
私は目を瞑ると意識を手放し、眠りに落ちていった。
翌朝、カーテンの隙間から差し込む光で、私は目を覚ました。
酷く瞼が重く感じる。
「これ…絶対、瞼腫れてるじゃん…」
枕元にあるスマホを引き寄せ、カメラをインカメラに切り替えた。
「ウッ…酷い顔…」
思わずスマホを伏せた。
「瞼冷やさなぎゃ…」
私はノロノロと起き上がり、キッチンへと向かった。
「休みで良かった〜」
今日は土曜日。
こんな酷い顔で学校になんて行くのは嫌だ。
ましてや、弦太にこんな顔見られたくない。
私は、冷凍庫から保冷剤を取り出し、部屋から持って来たハンカチに包み瞼に当てた。
冷んやりとして気持ち良い。
「気持ち良い…」
心地良い冷たさのおかげで、私の頭も少しずつクリアになる。
昨日の出来事も冷静に考えられる。
「お父さんに、言い過ぎちゃったかも…」
悲しそうなお父さんの顔が頭に浮かぶ。
その途端、私の心に後悔の波が押し寄せる。
私は、居ても立っても居られず呼び掛けた。
「お父さん…私の近くにいる?」
お父さんは現れない。
「昨日はごめんなさい。私…酷いこと言っちゃった…」
辺りを見回すが、やっぱりお父さんは現れない。
「お父さん…怒っちゃったのかな…?」
私は両手をキツく握り締める。
(お父さんを傷付けた…私のバカッ!あんなの八つ当たりじゃん。せっかく、お父さんに会えたのに…)
心の中で自分を責める。
「お父さん!ごめんなさい…戻って来て!」
私が再び呼び掛けた時、インターホンの音が鳴り響いた。
「誰?まさか…お父さん…?」
呟きながらモニターを確認すると、弦太の姿が映し出されていた。
「弦太!どうしたの?」
私は驚き、モニターの弦太に話し掛けた。
「結衣…突然ごめん。話しがあるんだ。ちょっと良いかな?」
(え!嘘…こんな酷い顔、弦太に見られたくない。それに、頭もボサボサ!)
私は、突然の事にパニックだ。
何とか気持ちを落ち着かせ、弦太に話し掛ける。
「急用なのかな?私、さっき起きたばっかりなんだよね」
「あ〜そうか…ごめん。出直した方が良い?」
バツが悪そうな弦太に、私は慌てて答えた。
「少しだけ待っててもらっても良い?秒で用意する」
「あはは。そんなに急がなくても待ってるから大丈夫だよ」
私は、それから速攻で用意をした。
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